豊島逸夫の手帖

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中国 原油・銀先物開始へ

2012年4月20日

新華社が中国国内で原油・国債・銀の先物取引を年内に開始の動きと報じている。
金先物は既に上海先物取引所に上場され取引高も急増中だ。更に、現物金取引所としてスタートした上海黄金交易所も、T+Dという決済を一日単位で延長する中国特有の先物取引を開始したところ、今や、最も人気の看板商品になった。
日本にとって気がかりは、既に金先物取引高において、上海先物取引所が東京工業品取引所に肉薄してきたこと。上海黄金交易所の取引高も含めると東京を上回る。

上海と東京の金先物取引高(トン表示、各取引所データを元にトムソン・ロイターGFMS社まとめ)

200920102011
東工取 11,914 12,198 15,194
上海先物取引所 6,660 6,794 14,444
上海黄金交易所 3,248 4,111 5,354
(金 T+D)


上海金市場は、未だ、輸出輸入統制が残る国内市場なので、国際金価格に完全に連動するわけではない。
しかし、今後、海外業者との直接売買が完全に自由化されれば、国際市場とのアービトラージ(裁定取引)が急増して、アッという間に、アジアでダントツの主導権を握る市場に急成長するは必至だ。
更に、筆者が上海で投資家向けセミナー講演したときに感じたことは、日本の多くの個人投機家が先物の買いから入るのに対し、中国人投機家は売りから入ることにも躊躇しない。Two-way=売り買い両方向の取引が顧客から出る市場は、流動性も豊富になるもの。
商品先物取引所というと「投機の賭場」というイメージが強く、また、その面が強いこともたしかだが、ユーザーから見れば、重要な価格ヘッジの場でもある。ヘッジの相手方としてリスクを取る投機家なしでは売買が成立しない。
筆者がスイス銀行時代に、シカゴのカーギルという穀物商社にトレイニーで派遣されたとき、プロの投機家が「娘のPTA授業参観のとき、お父さんの職業を問われ、胸張って、プロの投機家と明言した」と語ったことを思い出す。「収穫時の売り価格を種蒔き時に確定してヘッジできれば、お百姓さんの収入も安定する。そのヘッジ売りの相手方を勤めるという社会的責任もあるのだ。」と生徒たちに話したそうだ。
日本では投機というとマイナス・イメージしかない。そうなっても仕方ないような商法が横行してきたことも事実だ。しかし、商品価格の変動が高まるなかで、誰かがリスクを取らないと、素人のユーザーが価格変動リスクにもろに晒されることになる。リスクから逃れることは出来ないのだ。
日本も監督官庁や業界の既得権益のシガラミから脱し、総合取引所構想など市場の構造改革を急ぐべきだ。国際市場の動きは待ったなしである。

1184a.jpg1184b.jpgところで、今日の取引所データのソースにもなっている金需給統計の老舗GFMS社、グローバル・ヘッドのポール・ウオーカーが電撃結婚した。(日本でも毎年セミナー講演してきているから、ご存じの読者も多かろう。)20年来の友人なので、感激。お相手は、これまでも彼の所謂「パートナー」であったアンドレア。元CNNキャスターで、年は一回り以上も違うだろうか。勿論、ポールぞっこんである。
急に思い立って26時間後に入籍したという。彼らしい。写真は南アのゲーム・パーク(野生動物のパーク)にて。ツイッターで呟いたら、彼がこれまで独身とは知らなかったとの声多し。まぁ、来日すると六本木の遊び人だったけどね。これからは、おとなしくなるんじゃない・・・かな・・・(笑)

2012年