2012年6月26日
「コップの中の嵐」(storm in the tea cup)
NY外為市場関係者とドル円動向を論じ、日本の政局混迷に話題が移ったとき呟かれた一言である。
民主党の造反議員の票読みなど、全くレーダースクリーンに無い。
対して、ギリシャ、更に地中海に浮かぶキプロス島の信用不安にはマーケットが反応している。
日本よりキプロス。
ジャパン・パッシング(日本素通り)が常態化したとはいえ、日本人としては何とも切ない。
とはいえ、欧州債務危機の種は尽きないことも事実。
ギリシャの新首相が網膜剥離手術でEU首脳会議欠席。次期財務大臣も健康上の理由で就任前に辞退。ギリシャ代表者欠席のままギリシャ救済条件再検討を論じるという異常事態だ。
キプロスがEUに支援を求める五番目の加盟国になったことも、同国の地政学的重要性を考えると由々しきことではある。
キプロスの銀行は、ロシア人の富裕層が巨額の預金を預ける租税回避地。欧州からロシア向けの投資マネーもキプロス経由が多い。
キプロス首相が「EU救済が不可能となれば、ロシアに救済を仰ぐことになろう」と述べている。島がギリシャ系とトルコ系に分断されている国が、EUを追われ、ロシアの傘下に入れば、NATOとしても看過できまい。しかも、キプロス沖には有力な天然ガス埋蔵量が確認されたばかりだ。市場の関心が日本よりキプロスに向くのも当然か。
そして、ムーディーズによるスペイン28社金融機関格下げ。
市場は再びリスクオフ・モードに戻り、マネーは「安全性への逃避」に動くことになった。
日本円で消費税と社会保障の一体改革関連法案の採決で民主党造反議員数が54名を超えれば、一時的に円安に振れる局面もあるかもしれない。しかし、欧州勢は、そこを新たな円買いのタイミングと見ているようだ。