豊島逸夫の手帖

Page1280 米中領土問題はサイバー

2012年10月16日

米国パネッタ防衛長官が「サイバー・パール・ハーバー」と日本人にとっては穏やかならぬ表現で、米国への外国からのハッカー攻撃の危険性を、これまでにない厳しさで国民に訴えている。
時を同じくして、中国を代表する通信機器大手、華為とZTEを、米政府の通信システムから排除する動きが米下院で表面化した。
米中の「バーチャル領土問題」ともいえる現象がサイバーワールドで顕在化している。
米国内の政府、金融システム、エネルギーなどコア・セクターは「固有の領土」であり、外国人ハッカーによる「不法侵入」は「断固許さず」の姿勢が鮮明だ。
パネッタ防衛長官の説明は非常に具体的である。
「ハッカーたちは、列車を転覆させることもできる。特に化学物質を運ぶ列車の狙い撃ちも可能だ。大都市の取水源を汚染させるかもしれない。或いは、国内の広範囲で電力網を破断することも考えられる。」
サイバーワールドで「領土」に侵入された場合の特徴は、米国側からハッカーで積極的攻撃が出来ないこと。原則「自衛」あるのみである。但し、例外的にはオバマ大統領がイラン核施設のコンピューター・システムへの「攻撃」を命じたとされる例がある。また、ブッシュ政権時代にも「オリンピック・ゲーム」という機密のコード・ネームで「サイバー攻撃」が実行され、2010年に暴露された経緯もある。
このサイバー戦争で米国がてこずることは、ハッカーという「武装勢力」の数が限りなく増加する可能性があること。

話は飛ぶが、米中のもう一つの戦いである「通貨戦争」では、米国側が武器をいくらでも供給できるという優位性を持つことと対照的だ。QE(量的緩和)戦術により、FRBは輪転機を廻せばドル紙幣という「武器」を無期限に供給し続けることができるし、その意図を明言している。そして、この「武器」は過剰流動性と化し、中国など新興国を襲うわけだ。
果たしてハッカーと米ドル応酬合戦の様相になるのだろうか。
ちなみに、通貨戦争に於ける中国側の「防衛策」の一つが、蓄積した米ドルで金準備を増強することである。

なお、ソフトバンクの米携帯スプリント・ネクステル買収の報は、米国側に「1989年三菱地所によるニューヨークのロックフェラーセンター買収劇」を想起させ、かなりの衝撃を持って受け止められている。「ジャパンマネー再襲来」などの見出しが目立つ。しかし、コメンテーターたちも「中国に比し、米国の安全保障上の脅威はない」と一線を画している。
市場への影響としては、15日のニューヨーク株式市場で、ソフトバンク関連として、米国の携帯タワーメーカー会社株が買われる一幕もあった。

金価格は1750ドルのレンジ下限をブレークした。QE3の材料の賞味期限が切れ、次の材料である米国財政の崖問題顕在化までには大統領選挙も挟み、「材料」の端境期の如きエアーポケットにはまった状態。中国減速、欧州発リスクオフなど、売り材料にも事欠かぬ。しばらく下値模索の様相だ。

さて、昨晩は、BSジャパン夜7時からの1時間番組「日経ライブ・7PM」で喋りまくってきました。普段はテレビ出演でも「尺」が3-5分程度のことが多く、不完全燃焼で終わるので、昨日は、欧州債務問題と日本の財政不安についての話をタップリできてスッキリした(笑)。
意外だったのは、地上波ではない衛星波なので、はっきり言って、視聴者も少ないだろうなと思っていたら、番組終了後、あちこちから「見たよ」と電話やメールが来たこと。その人たちが異口同音に語ることは、BSのほうが深掘りしたユニークな番組が多いので、地上波より見るということ。これ、最近のトレンドだね。筆者にしても、テレビ視聴といえば、衛星波の経済番組かゴルフ番組程度だもの。BSをサーフィンしていたら、私の顔がたまたま映っていて番組見たという人が殆どだった。夜'時という時間帯だから、現役組帰宅は無理で、殆どがシニア層。それでもカネもっている層だから、番組に大手企業のスポンサーが8社もついたとのことだった。いつまでも似たようなバラエティー番組ばかり流していると、地上波も視聴者にもスポンサーにも愛想尽かされそうだね。

昨晩の番組でスタジオの笑いを誘った場面。
「欧州債務危機でいよいよ有事の金ですね」
「いや、ギリシャでは"有事のユーロ"。いざとなれば、まず"有事の缶詰"。そして3-4がなくて5に"有事の金"。」
「エッ、たしか豊島さんって、金の専門家でしたよね。らしからぬ発言。」
「ふふふ、ええ、まぁ・・・」
という司会者とのやりとりでした。
あいかわらず、話が脱線するので、ディレクター氏はヒヤヒヤの様子。でも、脱線の話のほうが往々にして面白いもの。「台本通りではつまらない」というのが筆者の持論。

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