2012年12月7日
アップル株とゴールドが年末のヘッジファンド売りに晒され急落している。
アップル株は9月、「iPhone5」フィーバーで700ドルを初めて突破した後、株価は約20%下落。それでも年初からの上げ率は35%を保っている。しかし、12月に入り「財政の崖」がカウントダウンに入り、その関連でキャピタルゲイン課税強化の可能性が嫌気され、ヘッジファンドの売り手仕舞いも重なり、5日には6%以上の下落。6日は、さすがに反発したが上昇幅は1.57%に留まり頭が重い。
一方、金価格も9月にQE3の思惑で1800ドル近くまで急騰。いよいよ昨年記録した史上最高値1923ドル更新への助走開始かと思われたが、その後、ジリジリ反落に転じ、12月に入りマクロ系ヘッジファンドの売り手仕舞いが立て続き1700ドルを割り込んでいる。
「財政の崖」がドル安を誘発し、代替通貨の金が買われるというシナリオが崩れ、「財政の崖」から生じる極度の不透明感からリスク回避の売りに見舞われているのだ。
アップルはスマホの米国での普及率が今年3月に50.4%と携帯電話を抜き、市場内に「成熟化」の兆しがちらつき始めた。次の希望の星がテレビ関連事業への進出だが、未だ具体性は見えない。
チャート的にも50日移動平均線が200日移動平均線を上から下へ突き抜ける「デッド・クロス」に接近中。しかも、大商いを伴う株価下落現象は、「劇場のシンドローム」を連想させる。観客の1人が「火事だ!」と叫び、全員が非常口へ殺到するイメージだ。
金価格は14日移動平均線を割り込んだ直後から下落が加速。一時は200日移動平均線のある1660ドル台へ接近する場面もあった。
本欄11月30日「ちらつく円安の反転、投機筋にご用心」にも書いたが、同28日にはNY早朝に1735ドルから1707ドルまで数分で急落という「超高速度取引」による仕掛けと見られる売りが市場をヒットした。
更に、12月4日には同じNY早朝に瞬時に急落して1700ドルの大台を割り込んだ。いずれもマクロ系ヘッジファンドの荒っぽい売り手仕舞いである。その直後には、やはり一般投資家のパニック売りによる「劇場のシンドローム」が下げを増幅させた。
それでも、6日にはアップル株同様反発して1700ドルを回復する場面もあった。
金に関しては、1600ドル台になると、長期現物保有派の中国やインドがいかに経済減速中とはいえ割安感から買いに出る。
筆者は11月に中東市場を視察してきた。ドバイが新興国向け現物市場の中継基地であり、そこでの販売量が需給のベンチマークと見られているのだが、訪問時の1730ドルでは閑散。ところが1600ドル台になると、昨日の電話情報収集でも、急に活気づいてきたとのことであった。更に、4日には韓国が11月に公的金準備増強のため14トンの金を購入していたことがIMF統計により明らかになった。中央銀行による金購入が価格下落過程で増加する傾向が確認されたのだ。
一方、アップル株も、成長株からバリュー株への変遷が複数のアナリストたちから指摘されている。長期的なポテンシャルを見込むジックリ保有型の投資家はバーゲン・ハンター。押し目を狙ってくる。
ちなみにフェイスブック株にも機関投資家マネーの流入が指摘されている。FB株価は、本欄11月14日「最大級の試練に立ち向かうフェイスブック株」で指摘した約8億株のロック・アップ(社員などインサイダーの売買禁止期間)明けの株式が、予想に反してさほど売りに出ず、「FB社員の愛社精神」が確認されたことで、20ドル割れの水準から27ドルまで急反発したところだ。FB株は来週ナスダック100指数銘柄に入る。IPOフィーバーが一巡したところで、株主構成にも安定化の兆しが見える。
さて、アップルとゴールド。
果たして、どちらが買いか。
分散投資の観点からは、二者択一ではなく、バリュー株とバリュー商品のポートフォリオ組み込みによる、より良いリスク・リターンの達成が正論であろう。
さて、昨日は、大手証券会社が新装なった皇居際のパレスホテルを実質貸し切って大規模セミナー。上場大企業のCEOたちが自らIRするという設定。
マイケル・サンデル ハーバード大教授が基調講演。前座の私のセミナーも補助椅子が出るほどの盛況。特に外人のファンド・マネージャーたちが3割を占めた。時あたかも日本株上昇中のタイミングも良かったのか。
ホテルのエレベーターの扉までその証券会社のロゴをデザインした作りになり、ロビーにはCEO秘書室の連中と思われる人たちが駈けずり廻る。その中を時折CEOの大名行列が通過する。序列とか主催者側も大変なんだろうと思った。
なんとも日本的な国際会議であった。こういう席に金の話というのも、時代の流れか。