豊島逸夫の手帖

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金高騰あと3年、FRBのお墨付き

2012年1月26日

本欄1月23日づけ「米ゼロ金利が2014年まで継続するなら」にて述べたシナリオが現実のものとなった。しかも、2014年の「終盤」までと言う。昨晩のNY金市場は、このゼロ金利長期化に言及したFOMC声明が流れ始めた時点から急騰。1660ドル台から、当面の上値抵抗線とされた1700ドルをあっさり突破。1710ドル台で引けた。
金利を産まない金は、ゼロ金利ゆえ買われてきた面が強い。そこで、これまではFOMCがゼロ金利2013年半ばまで継続と指摘してきたので、昨年8月10日づけ本欄の見出しの如く「FRBのお墨付き、金高騰は2年続く」と見られてきた。
それが昨晩のFOMC声明により、更に1年延長されたわけだ。
この意味は大きい。
欧州債務危機により、マーケットのリスク回避傾向が強まる中で、金もリスク資産として売れ込まれる局面が頻発し、投資家も新たな金購入に慎重な姿勢を見せ始めていただけに、その不安感を和らげるのに、FRBが一役買ったわけだから。更に、ECBや中国人民銀行にも利下げムードが強く漂い、世界的金融緩和傾向は、投資家の金買いに、かなりの安心感を与える結果となりそう。
但し、3月20日のギリシャ国債大量償還までは、短期的に再びリスク回避の金売りが、市場をヒットする可能性もちらつく。
本稿はリスボンで執筆しているが、やはり「ギリシャの次はポルトガル」が不可避という現実を現地で痛感している。ポルトガルのC世代は既に母国を見限り、ブリュッセルやロンドンに「頭脳流出」し始めている。リスボン空港で出発を待つ若者たちの多くが、分厚いスティーブ・ジョブ本を抱えて歩き廻っていた姿が象徴的だ。ポルトガルは「全土的過疎化」しつつある。3人の娘が「学業成績優秀」と自慢しつつも、「だから3人とも就職は外国さ」と寂しげに語り、「3月20日がポルトガルのXデーさ」と恐怖感を露わにするベビーブーマー世代の父の言葉が印象的であった。

2012年