2012年4月5日
この2日間で1680ドル台から1620ドル台まで、ほぼ一気に下げた金価格。その下落要因を纏めた。
以上の下げ要因が共鳴して、負の連鎖を引き起こしている。
なお、昨晩はプラチナの下げもきつかった。本稿執筆時点(4月5日日本時間朝6時)では、前日比43ドル安の1597ドルと、金より一足早く1600ドルを割り込んだ。米国景気回復モードであれば、産業用素材であるプラチナは買われてしかるべきであるが、リスク回避モードの中では、ボラティリティー(価格変動率)の高さが嫌気されたのだろう。金・プラチナ価格逆転現象も容易に正常化せず。
さて、問題は金価格がどこまで下がるか。
本欄3月15日には「金から株へマネーの里帰り」と題し、こう書いた。
「中印に勢い欠く。新興国市場の現地の感覚としては、1600ドル前半から1500ドル台を狙っているようだ。従って、レンジの下値は1500ドル台まで見ておく必要あり。特に、今後、欧州債務危機が再燃して、先進国金市場でリスク・オフの売りが出ると、もう一段の下げとなろう。」
更に4月2日付けでは、「4月危機」を警告した。
「Sell in May=5月は売りという相場格言があるが、今年は市場が先読みして4月が売りになりそう」と書いた。
それが、想定のタイミングより早く、いきなりイースター前から顕在化してきたわけだ。
となれば、当面は、下値模索となろう。
例えば、仮に、バーナンキが明確にQE3に否定的なコメントをする。同時に、欧州では、フランス大統領選挙でサルコジ敗れる。ギリシャ総選挙では反緊縮色の強い連立政権が、ギリシャ救済合意白紙撤回。中国では発表される経済成長率が更に鈍化。このような極端なシナリオになると1500ドル割れも考えられる。
しかし、そこはすかさず買われよう。経済減速とはいえ、中国・インドの2カ国で、年間金生産量2800トンの5割以上を買い占める状況に大きな変化はない。新興国の買いは、文化的金選好度の高さに支えられ根強い。ただ、懐が寂しくなれば、購入価格には昨年より神経質になるということだ。
しかも、ゼロ金利の先進国と異なり、中国は金融政策に利下げの余地を残し、必要とあらば財政出動の余力もある。
米国量的緩和後退観測も、バーナンキの一言で、あっさり覆される事態が容易に想像できる。
欧州は、緊縮政策の影響で、景況感悪化のリスクが付きまとう。均衡財政と経済成長の同時達成は至難の業だ。昨晩も、ドラギECB総裁が「出口戦略の議論は時期尚早」と釘を刺している。欧州経済が更に悪化すれば、欧州版QE発動の可能性もちらつく。
年後半には、金価格も再上昇トレンドとなろう。