豊島逸夫の手帖

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オニール氏 潮目は円安に変わった

2012年11月20日

"We want Abe! "(我々は安倍氏を望む)
BRICsの名づけ親として有名なゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長ジム・オニール氏の最新公式ニュースレターの見出しである。
彼はここ数年円安説に傾いていた。
今年1月には「円は25%過大評価、日本の黒字は終わりか」と述べ、同9月には「日銀はFRBを見習ってもっと果敢な金融緩和を」と語っていた。
そしてこの日曜日(18日付け)ビューポイントというニュースレターで、「我が意を得たり」とばかり自説を披歴した。
原文が手元にあるので以下翻訳する。

・・・以下、翻訳引用・・・
「Japan, Abe and the Yen」(見出し)
今日のレポートの最後に、簡潔に持論を述べておく。
1985年9月のプラザ合意から、私がGSに入社する1995年秋まで、私は円高派であった。その後、しばらくドル高派に転じたが、1997年以来円高派に戻った。私の円の理解はシンプルで、日本の国際収支(特に経常収支)の根強い強さから生じるドル円均衡レートの上昇だった。
しかし、それが最近逆転した。
日本は経常収支赤字を数十年ぶりに記録。過大評価された円レート、崩壊しつつ構造改革されない経済、ギリシャ問題などたやすいと思わせるほどの債務問題、インフレ・ターゲットに(現在は)強く動かぬ中央銀行、そして、やはり脆弱な経済。それに加えて、中国などとの関係複雑化。この関係はアジア諸国のために良くなければならず、ひいては我々世界諸国にも良くなければならない。
とにかく、近々総選挙があり、自民党の復権となろう。新首相になるであろう人物は、この2週間で3回「日銀に3%のインフレ・ターゲットを必要とあらば強制する」と語ってきた。
これは、90年代半ばから後半にかけて、外国から日本に多くの人はアドバイスしてきたことで、その時点では、彼らは円安に賭けて敗れた。
しかし、今や時は来たようだ。これらの人物をリタイア生活から引きずり出せ。円の見通しははっきり分かれている。方向感を決められずズルズルと進行するか、今後数か月で急落するかだ。私の意見では、最も興味あるマクロ事象だ。私はこの数年、益々円に対してネガティブになってきた。しかし、ここまでは、結果的に間違えていた。しかし、今や、事態は明らか。時は来た。
・・・引用終わり・・・

要は、まだ数か月は不透明という条件つきながら、円安に潮目が変わったとの主張である。
" We want Abe!"というような強い見出しで、ジム・オニール氏のような影響力ある人物が安倍円安を海外で語っていることは注目に値する。

そして、米国人個人投資家のレベルにまで日本株人気が拡散してきた事象も出てきた。ニューヨーク証券取引所に上場されている日本株ETFの出来高が急増していることだ。
代表的銘柄「アイシェアーズ・MSCIジャパン・インデックス(ティッカーEWJ)」の価格が先週の8.7ドル台から、19日には9.19ドルまで一本調子で上昇する過程で、19日の出来高は47,835,919株と過去三か月平均の14,729,500株に比し、3倍に増えている。価格上昇が加速した15日には8千万株の大台を超えている。
米国ではセクター別のETF市場が発達しており、個人投資家のリスク分散運用の有効なツールとして定着している。ゆえに、EWJが同意づいたことは、米国人個人投資家が日本株に注目し始めた現象として興味深い。
時あたかも、米国は財政の崖、欧州はギリシャ問題不透明、中国経済減速、中東情勢緊迫化の中で、日本の政局が「閉塞感を打開するか」と期待しての投資家の反応であろう。
なお、米国の日本株ETFは色々品揃えがあるが、為替ヘッジつきが人気だそうだ。
米国人から見れば日本株は外貨投資であり、円の為替リスクがつきまとう。特に円安見通しが強まると、円先物売りでヘッジするタイプが選好されるわけだ。外為市場が注目するシカゴ通貨先物市場の円売りポジション増加の一端がここにも見られる。

そして、金・プラチナは調整を経て昨晩急反騰。
本日のユーロ圏財相会議でギリシャへの440億ユーロ救済資金供与合意の見通しと、米国の財政の崖についてオバマ大統領と共和党ベーナー下院主導者ベーナー氏との間で妥協が成立しそうとの見方により、リスクオンになった。株も商品も総上げ。イスラエルとガザのミサイル合戦も地政学的要因として効いている。

それから、昨日紹介したゴールドフェスティバルとはこのこと。  ↓

http://goldfes.jp/program.htm (現在公開されていません)

2012年