豊島逸夫の手帖

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問われるスペイン人の勤労意欲

2012年9月7日

スペインという具体国名にまでは言及しなかったが、「国債買い取りの対象国」が「ヘルプ!」と援助要請すれば、「無制限買い取り」に応じます、とのドラギ発言。但し、緊縮政策をキッチリ遂行すれば、
という条件つきである。
問題は、この条件。
多くのスペイン人庶民は、既に十分緊縮していると思っている。現官僚でさえ、緊縮政策論議の最中に「スペイン人は人生を楽しむために生きているのだ」と公言して憚らない。
しかし、最近は人生を楽しめていない。それほどに自分たちは緊縮しているのだ、というのが本音だろう。
しかし、イソップ物語に例えれば、アリ組のドイツ基準からみれば、キリギリス組の緊縮努力はまだまだ足りない。ドイツ流の価値観は、「人生を楽しむために地味に働く」。
その意味で、勤労意欲に欠けると見えるスペイン人の借金証文である国債の無制限買い取りを、独連銀の反対を押し切って決断した、ドラギECB総裁に対するドイツ人の不信感は根強い。
最近、ドイツの調査会社が独シュテルン誌の依頼で行った世論調査に、ドイツ人のドラギ氏への信頼度を問う項目があった。その結果は、30%が「殆ど信頼せず」、12%が「全く信頼せず」、31%が「その人物を知らない」、そして、「尊敬する」との答えは18%であった。
そもそも、現ローマ法王はドイツ人なのに、欧州の金融政策決定権を持つ人物がイタリア人という事実に、庶民感覚として違和感を覚えているようにも思える。
メルケル首相の立場も微妙だ。「ユーロ堅持」の姿勢を強くアピールする過程で記者団に問われれば、「ドラギ氏率いるECBが任務を逸脱しているとは思わない」とかなり苦しげな答弁。しかし、ドイツ国内の選挙民は、南欧国債買い取りのインフレ効果を懸念する。ワイマール時代に、ハイパーインフレを体験させられた国民の民族DNAは変わらない。
6日には、メルケル首相とラホイ・スペイン首相の会談もあった。しかし、「救済条件について具体的な議論は無かった」と記者会見で両氏が認めている。ラホイ氏は、「ニュースになれば語る」とのコメント。6月末のEUサミットでは(ギリシャと同列に扱われず)、「条件無しの救済案」を勝ち取ったと誇らしげに記者団に語っただけに、なんとも歯切れが悪い。「スペインはギリシャとは違う」というプライドを果たして捨て切れるのか。
短期国債に限定して買い取り、とりあえず国債利回り高騰を防ぎ、時間を稼ぐ策は、あくまで止血剤でしかない。
病巣にメスを入れる構造改革は、人生の楽しみを奪う。
そして、ECBもEUもIMFもスペイン人気質を変えることは出来ない。
スペイン国債利回りは、当面、人為的に抑えられるであろう。しかし、年末までには急騰再燃必至と見る。ラホイ氏の不用意発言などが、そのキッカケになるかもしれない。


さて、金価格は想定通りのドラギ発言で、1700ドル超えまで上昇。しかし、問題は今晩の雇用統計と来週のFOMC。雇用統計が良い数字だと、QE3が遠のくとして売られかねないので、現状では素直に上がれない。
このタイミングで、明日は日経CNBCセミナー。80名の小規模にしたけど、応募は450名あったそう。はずれた人は、9月26日に開催される、新著発売(9月10日)記念講演会(於 丸善オアゾ)に来てください。

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今回の日経ムック本は、最近増えている女性読者層を意識した作りになっているけれど、男子参加も勿論歓迎だよ。年齢も問わず!

明日は、日経CNBCセミナーの前に、テレビ東京 昼12:05からの生番組にも出ます。トピックは、「快眠市場」。睡眠について。前回の番組では、「夏休みトラベル特集」でコメントしたけど、最近、何でも屋です(笑)。

2012年