豊島逸夫の手帖

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IMFとEUの不協和音

2012年10月9日

IMF総会の最大の議論の焦点が欧州債務危機だが、舞台裏では、ギリシャ・スペインへの救済についてEUとの軋みが目立つ。
EU内部には、このまま緊縮を押し付ければ、欧州経済全体が失速するとの危機感が根強い。ギリシャにもスペインにも、緊縮条件の達成期限を2年間延長などの時間的猶予を与えざるを得ない、との妥協案が浮上している。フランスは「延長すべし」。ドイツは「延長に渋々妥協せざるを得ぬか否か。2013年のドイツ国内選挙まで最終決定は持ち越したい」。
対して、IMFは「国家再生仕事人」集団である。韓国など過去に経済危機に陥った国々への救済に当たっては。「容赦なく」厳格な緊縮条件の達成を強いてきた。妥協は許さぬ。ここでギリシャ・スペインに少しでも甘い態度を見せれば、それこそ「しめしがつかぬ」。
EUは参加国の納税者の顔色をうかがい、IMFは出資者(特に米国)の顔色をうかがう。
更に、EU諸国が公的レベルで抱えるギリシャ向け債権約2000億ユーロについても、IMFは民間債権者同様に「ヘアーカット=強制債務削減」に応ずるべし、との姿勢だ。(当のIMFも200億ユーロの対ギリシャ債権を抱えるが、これについてはしっかり全額返済の条件を取り付けている。)IMFの最終要求は、ギリシャ公的債務の対GDP比を現在の約160%を2020年までに120%にまで引き下げることである。それが出来ないようであれば、ギリシャ救済から一切手を引くと突っぱねる。
しかし、EU(含むECB)側は、最終的にツケが納税者に廻る債務削減にはおいそれを応じられぬ。
欧州の納税者とIMFの出資者には超えられない溝があるのだ。
このギャップを埋めるべくIMF世銀総会の舞台裏でIMFとEUの間で様々な接触が試みられるだろう。今週の欧州の目は東京に向いている。

金プラチナともに欧州債務危機が懸念材料となり、金は当面1800ドルを超えられず。足踏みというか調整局面というか。中国経済悪化要因も足かせ。

2012年