2012年6月18日
ギリシャが借金を抱え夜逃げのリスクは当面回避された。しかし、一夜にして債務返済の見込みが立ったわけでもない。マーケットは「安堵相場」になろうが、既に関心は今週19-20日の米国FOMCに移っている。金価格は月曜早朝のアジア・オープニング時点で、1630ドル台から1610ドル割れまで急落の場面も見られた。とりあえず、「安全資産」に逃避していたマネーが里帰りの様相だが、FOMCでのQE3期待感も残り、やや後ろ髪引かれる気持ちのようだ。
ギリシャ政局は、早くも混迷継続の兆しが鮮明。勝利宣言したND(新民主主義党)の連立協議が難航しそう。既に、長年ギリシャ政治を支配してきたが、今や第三党になった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が「連立不参加」の方針を表明。敗れた急進左派連合のサマラス党首も「野党」として対立姿勢を明らかにしている。なお、PASOKのベニゼロス党首はベテラン政治家ゆえ、閣外協力の可能性をちらつかせつつ、ギリシャのオザワ的な言動を取り、存在感維持に努める可能性がある。
不気味なのは、テレビ討論会で代表者が女性二人を殴った極右「黄金の夜明け」党が得票率7%で18議席を獲得したことだ。ギリシャ国民の緊縮に対する堪えがたい不満の噴出現象であろう。
結局、今回の再選挙で、ギリシャの選挙民が「無節操な行動には走らない」ことは確認された。しかし、「借金返済しようにもカネはない」状況は全く変わっていない。借り手が夜逃げはしないと最低限の節度を見せたところで、ボールは、貸し手サイドに投げられた。アテネ市民に「御沙汰を首を洗って待つ」というほどの殊勝さも感じられず、選挙よりサッカー欧州選手権で14連勝中の無敵ロシアを破った興奮のほうが未だ覚めやらぬ感じだ。ドイツ国民から見れば、サッカーに向けられた国民的高揚感を、構造改革実行でも示せ、と言いたいところだろう。
ギリシャ側の「時間稼ぎ」で先送りという本音も透けて見える。3月の第二次救済合意の当日、現地メディアに載った見出しが「ねばり勝ち」であった。借金も、身の丈を遥かに超える額に膨らむと借りた者勝ちになるようだ。
今後は、貸し手側のドイツ中心に、事前調整型の秩序あるギリシャのユーロ離脱を模索することになりそう。ギリシャ火事のスペイン・イタリアへの延焼を防ぐ防火壁構築完成の暁に縁切りとする構想と見る。その防火壁とは兆ユーロ規模の救済資金プールという消火用水の池である。