豊島逸夫の手帖

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英文解釈で動く株、商品相場

2012年4月4日

今日の相場コメントは読者諸氏の英文解釈能力のテストから。
A number of
A few
A couple of

数の表現であるが、この意味の微妙な違いがお分かりであろうか。分からねば、今の相場は読めない。
というのは、欧米株・商品市場がFOMC(米連邦公開市場委員会)の中で何人が「追加的金融緩和」必要と考えるか、を発表される議事要旨から読み取り、そのニュアンスの変化で大きく動くからだ。
昨年12月のFOMCの議事録では a number of (多くの)委員が追加的金融緩和に前向きと表現された。
それが、今年1月には a few (数名)に変わり、更に、昨晩発表された3月のFOMC議事録では a couple of (2-3名)にまで数が減ってきた。
この英文解釈の僅かな違いが、NY株式市場ではダウ平均一時100ドル以上の下げを招き、金価格を1670ドル台から一気に1640ドル台まで引き下げた。
今や、トレーダーも英文学部出身がもてはやされるのでは、と戯言のひとつも言ってみたくなるような展開である。

それほどに、株も商品も、QE(量的緩和)依存症の症状が進行している、とも言えよう。通貨当局がQEにすげないニュアンスを滲ませると、忽ち、禁断症状が顕著になる。中央銀行のマネーばら撒きが市場の体質にステロイドの如く効いているのだ。
時節柄、花粉症の季節。
筆者も症状がかなり酷く、講演前に診療所でステロイド打ってもらって凌ぐこともある。これが、怖いほど効くのだが、問題は、一度でもステロイド投入した後、直ぐに止めると体がショック症状を引き起こすこと。1~2週間かけて徐々に投入量を減らさねばならぬ。
今の米国経済とて同じこと。
ドクター・バーナンキのマネー大量投入の効果か否かは定かでないが、血液検査の値(=米国マクロ経済データ)が好転したからといって投薬を直ちに止めると、患者(=米国経済)がショック症状を呈するは必定。
ツイスト・オペと呼ばれるFRBの新手の金融緩和策が6月で終了するのだが、その後、マネー投入を直ちに止めるわけにもゆくまい。患者の体調は、緊急病棟から普通病棟に移った程度で、ドクター・バーナンキが退院許可を出すまでには、まだ、かなりの養生期間が必要だ。
したがって、市場内には引き続き、年後半、量的緩和継続を予測する声が絶えぬ。

なお、昨晩のNY市場は、株も金も引けにかけ若干持ち直したものの、相場の頭は重かった。今週金曜に毎度お騒がせの米国雇用統計を控え、非農業部門新規雇用者数も事前予測では引き続き20万人前後の増加が見込まれる。となると、追加的金融緩和観測が目先は更に後退する可能性もちらつくわけだ。
相場は「もっとステロイドを」とせがむが、ドクターは当然慎重に年後半までは「経過観察」。
ちなみに、筆者かかりつけのドクターによれば、ステロイドは末期患者にのみ大量投入するそうだ。

2012年