豊島逸夫の手帖

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ギリシャ・デモの矛先は?

2012年2月8日

昨晩も、欧米市場はギリシャ最終交渉の進展に、一喜一憂の展開。
現地では、先週筆者が歩いたアテネの中心街シンタグマ広場が、デモ隊による抗議活動の場と化している。
あのデモ隊の怒りの矛先が向けられているのは、パパデモス首相ではない。ドイツのメルケル首相である。
自国首相には、とっくに愛想を尽かしている。そもそも国内政治への信頼感が欠如している。(日本のギリシャ化というべきか、ギリシャの日本化というべきか・・・。)「誰が首相になろうと、政治はひと握りの特権階級の人たちの間で実質世襲制のようなもの。」というアテネ市民の声が忘れられない。だから、「ギリシャ国民は、法を守るという意識が希薄なの。」と自ら認める発言を何回も聞いた。そこで引き合いに出される現象が、郊外駅の周辺の慢性的交通渋滞。通勤者の違法駐車だらけなのだ。それを規制する動きもないという。要は野放図である。
緊縮政策受け入れについても、パパデモス首相は、トロイカ(EU,ECBそしてIMF)の意を伝えるメッセンジャーに過ぎぬと言い切る。彼がギリシャ救済協定に署名しても、「私たちとは別世界の話よ。」と市民たちは語る。つまり、3月20日の大量国債償還というXデーを控え、時間との闘いの中、仮に最終合意に達しても、それが実質的に守られる保証はないのだ。昨日本欄で、今回、デフォルトが瀬戸際で回避されるだろうが、ギリシャ問題は未だ「5回裏」と書いた理由がここにある。
アテネのアクロポリス博物館では、都市国家アテネがスパルタなど近隣都市国家と協調合意、協定反古を繰り返した歴史が伝えられている。放漫財政を監視する役人への任命状が展示され、それでも事態は改善されなかった、という説明書きには思わず苦笑してしまった。
ギリシャがデフォルトすれば、ポルトガルに伝染する。このユーロ危機で、一番失うものが大きい国はドイツ。次の一手はドイツ次第。「ボールは、メルケル・サイドにある。」との一言が印象的であった。

1145.jpg先週、生粋のアテネっ子と歩いた通りが、今週はデモ隊衝突の場に。

2012年