豊島逸夫の手帖

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Dデイは5月6日

2012年4月23日

フランス・ノルマンディー上陸作戦(Dデイ)は1944年6月6日であったが、欧州債務問題のDデイは5月6日になりそうだ。
フランス大統領選挙は、マーケットが嫌うオランド氏優勢のまま5月6日の決選投票へ(予想通りの)延長戦入り。
そしてギリシャ総選挙も延び延びになっていたが、やはり5月6日に予定と発表されている。ここでも、マーケットが嫌う(緊縮拒否をマニフェストに掲げる)野党が優勢だ。
フランスでもギリシャでも、マーケットは緊縮断行、財政均衡優先を求めるが、国民は失業改善、経済成長優先を求める。
年金天国、若者地獄も共通する実態だ。
筆者がフランス経済に悲観的にならざるを得ないのは、ひとえに欧州出張の折りに会った元金融マンの「告白」を聞いてしまったからだ。ヒソヒソ声で曰く「パリ現地法人駐在僅か3年で、生涯、毎月1000ユーロ(約10万円)の年金がフランス政府から振り込まれる」と言う。駐在3年で10万円だと、まともに掛け金払った受給者はいったいどれだけ貰えるのか、と思わず考え込んでしまった。こんなおいしい既得権を容易に手放すはずもなかろう。一方、若年層の失業は増加の一途。そこで国民感情は移民排斥へ走る。フランス経済の長期拡大均衡達成には、若い移民層の国内消費が欠かせないことは、米国経済のヒスパニック層の購買力が雄弁に物語っている。しかし、長期低迷のフランス経済においては短期的に職を奪う存在として、力づくで排斥される。明らかに、拡大均衡どころか縮小均衡へのスパイラルに陥っている。最後の頼みはお決まりの富裕層課税強化であり、オランド氏の看板政策ともなっているが、これが企業家精神の芽を摘み、イノベーションの活力を奪うは必定。
結局、どちらの候補も国民に痛みを強いる政策は打ち出せず。短期的にはマーケットにフレンドリー(友好的)な印象のサルコジの敗退シナリオを織り込み、株もユーロも売られてきたので、「噂で売ってニュースで買う」展開が筆者の見立てだ。しかし、長期的には、東ドイツ併合を経て着々と経済構造改革を進めてきたドイツ経済との差は開くばかりだろう。3月のドイツの失業率は6.7%で約20年ぶりの低水準。対して、フランスの失業率は10%超え。フランス国債とドイツ国債とのスプレッドはジワジワ拡大してゆく。欧州経済危機打開に関しては、益々、ドイツ主導とならざるを得ず。こうなると欧州では「ドイツ主導」から「ドイツ支配」への警戒感が強まる。欧州共同債など「欧州団結」へのハードルは高い。
ギリシャも、最低賃金、年金2割カットが目標としてトロイカと合意されたが、その最低賃金が700ユーロ、年金は1300ユーロ。
5月6日の総選挙の結果誕生する新政権が、「民意」を受け、トロイカ(EU,ECB,IMF)との再交渉を謳うは、これまた必定の様相だ。Dデイにギリシャ救済が振出しに戻る可能性をマーケットは危惧する。
かくして、4月危機は5月初めまで水入りの情勢になった。
外為市場で円は陸山会判決と日銀金融政策決定会合の二大イベントが予定される今週がDデイだが、ユーロは日本の連休直後となりそう。
例年、日本のゴールデンウィーク期間に欧米市場は大荒れとなる。筆者も連休は、スペインで同国経済深掘り。5月6日はアテネ、5月7日はパリで現地の空気を吸いつつ、Dデイを迎えることとする。
なお、欧州の新たな火種としてオランダが急浮上。政党間の財政再建をめぐる協議が決裂し、今日にも、首相が総選挙を発表する模様だ。既に2013年の財政赤字が対GDP比で5%を超える見込みで、同国のトリプルA維持が危ぶまれる。
トリプルAとは「絶滅危惧種」になりつつあるようだ。

さて、スペイン国債深掘り前に掘りに行くのが、京都は長岡京のタケノコ♪。今年は寒さでゴールデンウィークにまで遅れるかと思っていたら、ここ数日で俄かにニョキニョキと現地からの報告。欧州出張の前に京都に行くことに。
そして、ガーラ湯沢の春スキーもこれから最高の季節。今年は山頂で、まだ積雪250センチもある。同時に、そろそろ桜も咲き始める。こうなると、春スキーで汗ビッショリの後、麓の源泉「山の湯」で桜見ながらの温泉! たまりませんな。日本人でよかった~と心底思うよ・・・。
スキーでカラダが仕事対応からスポーツ対応に出来上がっているので、ゴルフも(有村千恵プロがツイッターで呟いていて、はげどう、なのだけど)「腹筋で打つ」感覚でアイアンが切れる。スキーも板で雪面をじんわり捉まえるのはやっぱり腹筋だ。

2012年