豊島逸夫の手帖

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アベマリアを謳う市場

2012年12月20日

「日銀はアベマリアの斉唱に加わるのか?」
英語では"Ave Maria"と表記されるところを、"Abe Maria"と書き換えて、欧米市場で語られている。
今回ほど、海外で日銀金融決定会合が注目されたことはないだろう。
筆者も働いたことがあるシカゴ商品取引所のピットでも話題になるほど。ここまで浸透すると個人的には材料としての新鮮味が薄れてきたと感じる。
米国は「財政の崖」によるリスク・オフ・モードだ。18日のニューヨーク市場ではVIX(ボラティリティー・インデックス)が前日比11.75%急騰して17.40をつけている。通称「恐怖指数」とも言われる指標は、市場の警戒感を映す。金市場でも流動性選好の売りが市場をヒットして、1700ドル台を割り込み、1660ドル台で推移している。
その中で、ひとり気を吐く東京市場の株価、そして円売りの波は、いやでも市場の注目を惹く。
東京発のモメンタム(市場の勢い)に乗るべきか、乗らざるべきか、彼らも迷っている。
時期的には実質クリスマス休暇入りしつつあり、多くのトレーダーは気もそぞろだ。今年のクリスマス・ラリーが意外な場所ニッポンで起こったので、「今回は既に乗り遅れた」と傍観する投資家も多い。
但し、クリスマスが明け、実質新年入りすれば、基本的にアンダーウエイトで割安感のある日本株、そしてドル円の「機影」が、少なくとも、欧米投資家のレーダー・スクリーンでフォローされることは必定の様相だ。
世界的金融緩和の流れに日本も本格参入するのか。或いは、「悪い金利上昇」スパイラルに突入するのか。期待と不安が交錯する。
総じて、グローバル・マネー過剰は加速している。短期投資資金は目先の思惑で動くのでアテにはならないが、長期マネーは、2013年ベース・シナリオとして日本株高、円安を描き、リスク・シナリオとして円長期金利上昇を意識する。
株高の持続性については、「毎年首相が変わる国」の新政権が海外投資家に対して、説得力あり期待感を持たせる「成長戦略」を打ち出せるか否かが最大のポイント。

足元では期待先行の相場ゆえ、日銀金融政策決定会合で仮に「満額回答」を得られなくても、市場では「次回への期待」が強まるであろう。逆に、「満額回答」ともなれば、期待買いで膨らんだ取組の巻き戻しリスクが高まろう。
Abeマリアの斉唱団も、非常出口に近い場所で謳う人たちが多そうだ。

さて、昨日は京都の実業家集団に頼まれ講演した後、南座の顔見世を見て、夜は祇園でどんちゃん騒ぎ。朝は働いたけど、あとは久々のリスク・オフならぬワーク・オフの日でした。
特に南座は最前列の席で、勘九郎の汗や衣装の裾が触れそうなくらい。勘三郎の死は個人的にもショックだったが、息子たちの(未だ未熟なれど)若いエネルギーを目の前で感じました。
それから藤十郎さんって、たしか80歳だよね。若い!艶がある!ビックリ!ジムロジャースより遥かに迫力ありました(笑)。
顔見世らしく華やいだ舞台で、普段、相場モニターばかり見ている身には、新鮮な癒しにもなりました♪
夜はこのブログでも何回か触れた行きつけの祇園「味のらく山」で、12月恒例の「大根の炊いたん」とかクリーミーな「ジャンボ・エビイモ」とか「マル」=すっぽんで暖まり。素材の良さを生かして、あまり料理法を「遊ばない」、そして「高級料亭」みたいに気取らない家庭的な、らく山の大将のセンスに脱帽。
日本人で良かった、としみじみ感じるひとときでした。

2012年