豊島逸夫の手帖

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金市場資金流入続いている証拠

2012年8月30日

今週に入って、欧米市場でちょっとした異変が起こった。
金ETF市場の残高が2457トンに達し、フランス、イタリアの公的金保有量を抜き、世界第四位の金保有量になったのだ。
ちなみに最新統計は、以下のとおり。(単位:トン)

1. 米国 8133
2. ドイツ 3395
3. IMF 2814
(ここに金ETFが入り 2457)
4. イタリア 2451
5. フランス 2435
6. 中国 1054


まだイタリアとは僅差ですから、短期的に順位が入れ替わることもあるかもしれないが、長期的にはIMFを抜くことも今や視野に入る。
金市場は短期的乱高下を繰り返しつつ、価格水準を切り上げているが、年金基金などの中長期マネーが金市場にジワジワ流入していることを示すデータだ。

それから、もう一つの話題は、ややプロっぽくなるが、VIXの先物価格プレミアム(専門用語でコンタンゴ)が拡大していること。
本稿執筆時点(日本時間早朝)のVIXを見てみよう。

限月
2012年9月 19.25
2012年10月 21.70
2012年11月 23.25
2012年12月 24.15
2013年1月 25.80
2013年2月 26.95
2013年3月 27.95
2013年4月 28.50
2013年5月 28.70


先に行くほど値が上がっているのは、投資家が現在の地合いを「嵐の前の静けさ」と見ていることを示す。
米国の「財政の崖」、欧州債務危機、そして中国経済減速などの主要要因が今年年末から来年年初にかけ株価の大きな変動をもたらすであろうことを予測しているわけだ。
なお、VIXとは「ボラティリティー・インデックス」の略称で、投資家が相場の先行きにどの程度の不安感を持っているかを示すので、別名「恐怖指数」とも呼ばれる。
アメリカのCBOE(シカゴ・オプション取引所)が、株価指数S&P500を対象とするオプション取引の値動きを元に算出・公表している。

さて、目先の動きは、今週末から来週にかけて大きな山を迎える。
8月31日のバーナンキ演説(ジャクソンホール)では、サプライズなさそう。9月6日のECB理事会で、ドラギECB総裁が、EFSF(欧州金融安定化資金)が南欧国債発行市場(プライマリー・マーケット)で買い支え、ECB が流通市場(セカンダリー・マーケット)に介入することを示唆する可能性がある。
9月7日は、8月の米国雇用統計発表。ここでの数字が9月12日のFOMCにおけるQE3有無の重要な判断基準となろう。そして、同じ12日にはドイツ憲法裁判所がESM(欧州安定メカニズム)と新財政協定が合憲か違憲かの判断を下す。ドイツのOKなしでは、現在の南欧救済スキームは成り立たないので注目される。
来週はVIX急騰の局面がありそうだ。
おっと、9月10日にも重要イベントが。日経ジェフ豊島ムック本2012年バージョン発売!(笑)

2012年