豊島逸夫の手帖

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中国、世界最大の金鉱会社一部買収へ動く

2012年8月20日

カナダのバリック・ゴールドといえば年間生産量238.7トン(2011年)を誇る世界最大の金鉱山会社。(ちなみに、世界の年間金総生産量は2,818.4トン)。
その傘下のアフリカン・バリック社の発行済株式の74%を、中国の最大の国営金鉱山会社チャイナ・ナショナル・ゴールドが購入すべく、「交渉に入った」と両社が確認した。
他の中国系金鉱山会社もアフリカン・バリック社には興味を示しているもよう。
アフリカン・バリック社はタンザニア(金生産量で世界15位、年間49.6トン)に有力な金鉱山を保有。金埋蔵量528トンは、かなり魅力的な数字だ。ロンドン証券取引所に2010年に上場。しかし、御多分にもれず、電力不足で生産目標達成未達が続いていた。
不採算資産圧縮中のバリック社と、長期国策として金など希少資源獲得に動く中国の思惑が一致したようだ。

中国は金が足りない。経済減速中とはいえ、最新の金需給統計では2011年7月から2012年6月までの中国の年間金需要は786トンと上昇傾向。同様に経済減速中のインドの金需要は773トンに減少して、遂に、中国がインドを追い抜き、世界最大の金需要国となった。金解禁による規制緩和特需に沸く中国。干ばつ、大停電、経常収支赤字のため金への課税強化などマイナス材料が金需要を圧迫するインド。二大新興国の経済力の差を示す象徴的なデータでもあろう。
一方、中国は今やダントツで世界一の金生産国(2011年、371トン)。二位のオーストラリア258.3トンを大きく引き離す。南アは凋落の一途でいまや五位の197.9トンである。
それでも、年間786トンの国内需要を国内生産371トンで満たすことは出来ない。その結果、一大金輸入国でもあるのだ。
しかも、公的分野でも中国は金準備増強に動いている。
そこで、南ア以外のアフリカの金資源獲得に動いているわけだ。

それにしても、世界最大の金生産国中国は一大金輸入国。年間金生産量が僅か8.7トンの日本は昨年100トンを超す一大金輸出国になった。
尖閣諸島領土問題に揺れる日中関係だが、沖縄海域には金を含む豊富な金属資源が確認されている。領土問題では資源確保が重要な命題であるが、日本国内に広がる金買取ショップを通じて回収された金100トン以上を国内備蓄せず、輸出されるまま放置し、それを中国が輸入するという現実に政策の矛盾を感じる。

さて、筆者は、今週後半から上海でのセミナー講演出張予定なんだけど、なんか情勢が不穏だなぁ。。日本人スピーカー登壇で大丈夫なのかなぁ。。

ブログは先週も書き続けていたけど、ここのブログは事務局1週間夏季休暇のためアップできませんでした。

2012年