豊島逸夫の手帖

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今年のクリスマスラリー、注目は円

2012年12月10日

12月になるとNY株強気筋から「クリスマスラリー」のアノマリーが語られる。しかし、今年に限っては「財政の崖」が米国個人投資家・消費者の心理を委縮させている。
代わって、注目されているのがドル円相場。
12月7日の取引終了後に発表されたシカゴ通貨先物市場(シカゴ国際金融取引所、IMM)での投機筋の売りポジションとネット売越残高(12月4日時点)が前週に続き急騰して5年超ぶりの記録的高水準に達した。

IMMにおける投機筋取組残高
(枚数、1枚 1250万円)
ロング(買い) ショート(売り) 売越残高
10月23日 25,550  43,746 18,196
10月30日 19,886  56,906 37,020
11月 6日 24,966  65,070 40,104
11月13日 21,980  52,427 30,447
11月20日 28,272  79,661 51,389
11月27日 27,027 106,493 79,466
12月 4日 20,929 111,255 90,326


この通貨投機筋の円売りポジションは短期的さや稼ぎ狙いであり、基本的にゼロサム・ゲームだ。売った円は早晩買い戻されるは必定。
グロスの売り111,255枚といえば、1兆3900億円相当の売りポジションである。膨れ上がった売り玉の塊が、今や、買い手仕舞いのタイミングを虎視眈々と狙っている。残された時間は少ない。
欧米市場は17日の週後半から実質的にクリスマス休暇・モード。2012年の実質的年末でもある。
しかし、東京市場はクリスマス前後でも普段通りの営業ゆえ、円相場も動く。そこで、米国の投機筋がクリスマス休暇前に膨張した円売りポジションの手仕舞い買いに動く可能性が強い。
そのキッカケとしては11-12日に開催されるFOMC、そして「財政の崖」問題を巡る協議から生じる不協和音などが考えられよう。

今回のFOMCでは、現在実施している「ツイストオペ」(短期債を売却し、同額の長期債を買い入れるプログラム)が年末で期限を迎えることから、さらなる債券買い入れプログラム決定の可能性がある。これをQE4と呼ぶ向きもあるが、その場合にはドル売り円買い要因となろう。
或いは、2015年央までとされている超金融緩和終了の時間軸変更もなきにしもあらず。より具体的に失業率というガイダンス設定も視野には入る。目標失業率が6%以下など低ければ、QE継続も長引くという連想を産むだろう。
なお、米国発のドル売買要因のインパクトを見せつけたのが7日のニューヨーク市場。
朝方の米国雇用統計が事前予想を上回る14.6万人増、失業率も7.7%へ改善の報で、円は82円30銭から一気に棒状に82円80銭まで円安に振れた。
しかし、約1時間半後にミシガン大学消費者信頼感指数が前回の82.7から74.5への急落と発表されるや、これまた一気に円高進行。雇用統計前の82円30銭水準を割り込んだ。

一方、日本発では更なる円売り材料が予想される。14日には日銀短観が発表され、かなり悪い内容が出そう。そうなると19日からの日銀金融政策決定会合での追加緩和の可能性が強まる。
そして16日の総選挙では自民党優勢観測が伝えられる。財政規律の緩みが連想され悪い円安(日本売り)を誘発するリスクもある。
円の需給を見れば、10日午前に発表された10月の国際収支は、経常収支が4141億円と二か月ぶりに黒字を確保した。
しかし、貿易収支の赤字に対し、所得収支1兆2436億円の黒字が上回り、経常収支は黒字となる構図だ。今後も、海外資産からの配当や利子の受取額などから成る所得収支への依存度は高まろう。
この国際収支の構図は、一方的な円高傾向の終焉を告げる。但し、所得収支が黒字を保つ限り、「円暴落」の可能性は薄い。
なお、ワイルド・カードとしては北朝鮮ミサイル発射も延期濃厚だが、市場のセンチメント次第で材料視されることもありうる。

以上、見てくると、ドル円市場には、投機筋の潜在的円買戻しエネルギーが蓄積しているが、米国発のドル売り円買い要因や日本発の円売り要因も拮抗しよう。
総じて、円のクリスマスラリーがあっても80円近辺までか。欧米のクリスマス明けには第二波のIMM投機筋円売り攻勢がヒットしても不思議はない。
今年前半に84年までつけた円安相場では、2月から5月までIMMの円先物ポジションは14週間連続で売越状態が続いた。今回はまだ7週目である。安倍円安相場は未だ若い。
そして、金価格だが、7日の雇用統計後、瞬間的に1690ドルを割り込む急落を見せたが、直ぐに1700ドルを回復。ドル円同様、乱高下を演じたが、総じて、1700ドル割れは買われている。

さて、昨晩は480名の宝飾業界関係者が集まる大規模パーティーがあった。今どき、珍しく多い参加者数。立食かと思ったら着席。「得意技」の「途中で会場からスーッと消える術」を使えず(笑)。
久しぶりにあの業界の顔見知りに会った。なかには未だ私がWGCの人間だと思い込んでいる人もいて、タイムスリップした感じ。
でも、宝飾業界で知り合った人たちには未だに個人的に親しくお付き合いしている友人も多い。個性的(良くも悪くもw)なので、話していて面白い。

最後に前回触れた、パレスホテルでの機関投資家セミナーの写真貼っておきます。「コモディティーのスーパーサイクルはいつ終わるのか」などの質問も。
来週の日経金融ニッポン委員会のセミナーは定員100名(日経ID保有者限定)のところ約700人の応募があったそうで、これは、もっと個人向けセミナーやらねば、と思っているけど、個人事務所だと、事務が廻らない。
来月は、オープン形式では東証とか東京商工会議所のセミナーがあるから、また、お知らせします。

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2012年