豊島逸夫の手帖

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プラチナ・カードとゴールド・カードのステータスが逆転する日

2012年3月23日

年度末となり、来年度のプラチナ・カードが送られてきたのだが、貴金属の世界に居ると、今や、ゴールド・カードのほうにプレミアム感を感じてしまう。
昨年からプラチナ価格より金価格のほうが高い逆転現象が続き、今月に入り、一旦、順ザヤに戻ったのだが、今週には、再び逆ザヤが拡大中だ。
昨晩も、金プラチナ両方が下落。しかし、下落幅は金が5ドルで1646ドル。プラチナは18ドル近くで1618ドルとなった。(本稿執筆時点、日本時間朝7時)。
産業用資材であるプラチナは景況感を映す鏡。それも流動性が小さい市場ゆえ、拡大鏡の如く分かりやすい。
つい先週には、米国経済回復期待を囃し、プラチナが急速に買われ、金価格を追い抜き注目された。一時はプラチナ価格が金価格を50ドル近く上回った。
それが、今週は一転。中国経済懸念に欧州経済懸念が重なるや、下げ足を速めているのだ。
プラチナ市場をウオッチしていると、世界経済の脆弱性を感じざるを得ない。
対して、金は、「無国籍通貨」としての価値が、「通貨大空位時代」の中で浮上しているので、値が下がれば、国が外貨準備として購入したり、年金がリスク分散で買いを入れるなどの動きが見られる。しかし、中国、欧州経済懸念により、リスク回避で売られる面も無視できない。総じて、短期的には売りが買いを上回る地合いが続いているが、プラチナに比し、買いの相殺部分が大きい。
なお、昨晩は金が一時1620ドル台、プラチナは1600ドル割れ寸前まで売り込まれる局面もあった。
欧州時間帯では欧州債務危機再燃が懸念され、リスク回避の売りが勝るのだが、ニューヨーク時間に入ると、米国経済のデカプリング論(中欧経済との非連動性)が語られ、買い戻された。今週は、特に欧州売り、米国買いのパターンが既に3日続いている。
貴金属の世界では、従来の「市況の法則」に反する事態が頻発している。ドル高なのに金高とか、昨晩のようにドル安でも金安とか、ドルとの相関が薄れている事象がその典型だ。そこで「プラチナは金より高い」という「市場の常識」も、まずは疑ってかかるべきと感じている。そもそもは希少性に於いてプラチナが勝るという論拠なのだが、いかに生産量が金の1/10以下とはいえ、実需がついてこなければ、価格が下がるは必定。
ゴールド・カードとプラチナ・カードのステータスが逆転する日が来るかもしれない。

さて、昨日は思わず苦笑のエピソードがあった。
週末の朝日新聞日曜版金特集を読んだ、筆者の仕事を離れたスキー仲間の一人からメールで、「豊島さんが"金"やってるって知らなかった」。
まぁ、本を出版するたびに、三省堂の店頭のような一般の場では、筆者の知名度など無いに等しいことは分かっていることではあるが、それより、"金"そのものの浸透度がマダマダ限られていることを改めて実感したのだ。日経の世界では理解されてきたが、朝日読売の世界になると未開発状態だ。「有史以来採掘された金の量は50メートル水泳プール3.5杯分」という話を初心者向けゴールド・セミナーですると、業界の人たちは「またかよ。」という顔をするが、聴衆の9割は「へぇ~」という新鮮な驚きを示す。ということは、金の潜在需要が未だに未開発ということなのだ。機関投資家でも、そして日経の記者さんたちでも、商品部以外の人たちは同様の反応だ。
まぁ、筆者など、例えれば、「ゴールド音頭」というヒット曲一曲(シングル・アセット)で、地方のキャバレー廻りする演歌歌手みたいな存在かもしれないね(笑)。よくあることだが、その演歌歌手は次第に同じ曲に飽きてアレンジして歌ってしまう。でも、聴衆はオリジナルの歌を聞きたいのだ。初心者向けゴールド・セミナーとて同じこと。ギョーカイの人たちは当然飽きているが、話し手としては飽きずに同じ歌を繰り返し歌うように自戒を込めて己に言い聞かせている。
ただ、困るのは、初級と中級の混成講座。飽きている人と飽きていない人が混在する場だ。実はこういう混成講座が多いのだが、その時は、ところどころアレンジしながら歌っている。それに、同じメッセージでも肉声で直接聞くのは新鮮という声も、アンケートではよく見かける。

さて、今週末は日経プラスワン・フォーラム大阪篇。会場は大阪ビジネスパーク。↓

http://www.mmc.co.jp/gold/event/010040/index.html 

(*セミナーの応募はすでに締め切られております。ご了承ください。)

2012年