豊島逸夫の手帖

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救われるスペイン、見放されるギリシャ

2012年7月27日

ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の「ユーロ安定へ出来ることは何でもする用意あり。Believe me 私を信じて。」発言は効いた。
スペイン10年債利回りも、昨日の欧州市場では7.39%で寄り付き、一時は7.42%にまで上昇したが、同発言を受け急落。結局、危険水域とされる7%台を割り込み、6.92%で引けた。
同国債利回りが7.6%をつけた7月24日の本欄では、「トレーダーの感覚としては、スペイン国債の利回りは、今がピークとも考えられる」と書いた。「スペインはギリシャと違い大国。"Too big to fail "大きすぎて破たんさせられない。いずれ欧州連合(EU)も救済せざるを得ない。しかも、ヘッジファンドは空売り規制をかけられた。」との読みであった。
今日の日経朝刊は、「スペイン支援に向け、ユーロ圏各国は欧州金融安定基金(EFSF)や欧州安定メカニズム(ESM)による国債購入の検討を進めている。」と報じている。
実は、スペインは24日に「勇み足」を演じている。同国政府が、イタリア、フランス両政府と連名で、スペイン支援の枠組みを決めた6月末の欧州連合(EU)首脳会議の合意について、「早急な実施を求める」との緊急声明を発表したのだが、その後、仏伊両政府がそれぞれ「聞いていない」と否定するコメントを発表したのだ。市場では、財政不安加速に危機感を強めたラホイ首相の「勇み足」とされている。
それでも救済せざるを得ない大国スペイン。
対照的に小国ギリシャは徐々に見放されつつある。
ドラギ総裁もギリシャ危機に対して、「なんでもやる」発言までは踏み込まなかった。
25日にはシティーグループが「ギリシャのユーロ離脱確率、今後12~18ヶ月以内に約90%」に引き上げた。これまでは離脱のタイミングを2013年1月1日と想定し、離脱の可能性は50~75%としていた。
本欄でも、「ドイツの本音はギリシャを切らざるを得ないということ。但し、イタリア、スペインへの火事延焼を防ぐ防火壁、即ち、巨額の救済資金プールという消火用水池を構築するまでは瀬戸際で妥協、救済せざるを得ない。」と書いてきた。
今週はトロイカ(EU、ECBそしてIMF)の査察団がアテネ訪問中。お目付け役が現地へ乗り込み厳しく監視する中で、ギリシャ国内は「それでも」夏休みモードだ。査察団には「反省が足りない」と映り、心象は如何にもよろしくない。更に、新たな連立政権は再選挙において僅差で成立した経緯もあり、基盤は脆弱。進行する国内経済悪化の痛みに耐えかねた国民が急進左派支持を強める動きも顕在化しており、現地の新聞はギリシャ政局9月危機説を唱える。
そうなると、ドイツは先述の「秩序あるユーロ離脱」を画策するが、ギリシャが勝手に出てゆくという「無秩序な離脱」シナリオも、絵空事とは言えぬ状況だ。捨てられる前に、自分から家を出る、と開き直られるとドイツも困る。とはいえドイツ納税者の忍耐も、もはや限界に達している。
ドラギ総裁が語る「ユーロ安定」との言葉に、果たしてギリシャも未だ入っているのだろうか。本音を語るはずもないが、気になるところだ。


さて、金価格が上がってきた。
今週はウオールストリートジャーナルとNYタイムズが「来週のFOMCでいよいよQE3の可能性」を書きたてたことで、急速に金市場にも期待感が膨らみ1600ドル超え。
さて大台維持できるかとウオッチしていたところ、先のドラギ発言で更に金買いが加速した。今朝の執筆時点では1615ドル。
今年正月の本欄2012年金価格予測でも、「2012年中に、米国はQE3、ECBはドラギ新総裁のもとQE1と欧米量的緩和の競演シナリオとなる可能性もある。これが1950ドルのシナリオ。(刷れるドル・ユーロ、刷れない金)の差が強く意識されることになろう。」と書いた。このシナリオの実現性が強まったわけだが、問題は予想される高値。結論から言うと、筆者は1950ドルから1800ドルに、一ヶ月ほど前から引き下げている。やはり、インド・中国経済減速、特に雨不足が追い打ちをかけつつあるインドの金需要減少傾向が気になるからだ。同国が経常収支赤字対策として金へ課税を強化したことも年初の想定外であった。更に、欧州債務危機によるリスク・オフの売りが未だに続いていること。相対的安全性への逃避マネー流入も止まったわけではないが、かなり相殺されている。
いずれにせよ、まずは来週のFOMCに注目。
そして米国雇用統計、更に、ECBの次の一手も含め、今年の8月は異常気象以上にホットなマーケットになりそう。
そんな折り、来週7月30日(月)BSジャパン(テレビ東京系の衛星波だから全国どこでも見られるよ)の夜7時からの一時間番組でたっぷり金について生放送で語ることになった。7PMという番組。シニア世代には懐かしい大橋巨泉の11PMをもじった番組名からしても、シニア層対象の番組と知れる。昨日、番組打ち合わせやったが、殆どフリートークなので、果たしてどうなるか。FOMC直前というプロにとっては実に悩ましい局面だが、トークは個人投資家向けに長期の話に徹するつもり。
なお、来週は8月4日(土)にも、テレビ東京で生出演予定。
その翌日からシンガポール出張で、ジムロジャーズ対談。
更に、上海での中国人投資家向けセミナー講演も続き、どうも、夏休みを満足に取れるか怪しくなってきて、やばいのだ!!!
WLB(ワークライフバランス)是正を求めて独立したのに・・・。
せめての息抜きで、昨日は、六本木ミッドタウンで季節の生菓子を食べながらお茶した。
http://www.toraya-group.co.jp/products/pro08/pro08_001.html
今晩は新大久保イケメン通り近くの焼肉屋に繰り出す。
いずれもメンツはアラサー女性たち。彼女たちのぶっ飛んだ発言が新鮮で、爆笑が絶えない。
週末は福島の高原。早くもスキーシーズンに備え自主トレ開始。スキーで骨折だけは、職業上洒落にならないので、特に股関節のストレッチが大事。急な雪面の変化に対応できる柔軟性を維持しておかないと、思わぬ怪我をするから。
なお、以下の写真は先日のグローバル・ママネットワーク主催セミナー光景。右下に映っている赤ちゃんスヤスヤの表情が和むね。

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2012年