豊島逸夫の手帖

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6月の嵐に身構える市場

2012年6月4日

欧州発「売りの5月 (sell in May)」の騒擾に続き、6月になった途端、米国発の強烈な売りがNY市場を襲った。震源は米国雇用統計の「無残」とまで表現される悪化。株安、ドル安、原油安のトリプル安に対し、債券高、円高、金高のトリプル高の構図だ。
市場の不安感を表し「恐怖指数」といわれるVIXも26.66と今年に入っての最高水準に急上昇。
リスクマネーは株を離れ、米国債に流入。10年債の利回りは、遂に1.4%台にまで低下。いよいよ「日本化」の兆しが顕著だ。
外為市場では、主要通貨の相対的人気度を不等式で表すと、円>米ドル>ユーロ。5月はユーロ独歩安であったが、6月は円独歩高の兆し。「最も弱くない」通貨の座をめぐり、「弱さ比べ」で接戦を演じていた米ドルVS円の(情けない)闘いも、米雇用統計悪化の衝撃で、マラソンに例えれば、2位の米ドルが失速して1位の円の独走を許す結果に。
そして、商品市場では、米国景況感悪化の波をモロに受けた原油が続落。しかし、「先読み」がウリの金市場は、金融政策対応としてのQE3を織り込み始め、60ドルもの急騰を演じ一気に1620ドル台へ。
今朝(4日)早朝のアジア市場も1623ドルで寄り付いた。
米雇用悪化がギリシャのユーロ離脱観測によるリスクオフを吹き飛ばした。先週金曜日の買い手はもっぱら投機筋の買戻し。ショート・カバー・ラリーと表現されるが、欧州発リスクオフの売りを見込んで、先物市場で空売りポジションを蓄積してきた投機筋が慌てて買戻しに走った。先物市場に空売りポジションが急増すると、いずれ買い戻される宿命ゆえ、市場内にはマグマの如く潜在的買いエネルギーが蓄積する。それが米雇用統計の震動で一気に噴出したわけだ。
さて、6月の市場の嵐のピークは17-20日。この4日間で趨勢が決まりそう。
6月17日のギリシャ再選挙と6月19-20日のFOMC(米国連邦公開市場委員会)が続く時期である。
目先は今週6日(水曜日)にECB理事会が開催され追加的金融緩和の方向性が議論され、更に7日(木曜日)にはバーナンキ議長の議会証言もあり、今回の雇用統計を受けての反応が注目される。なお、先週金曜日(1日)発表された中国PMI(製造業購買担当者景気指数)の6か月ぶりの低下を受け、中国人民銀行が更なる金融緩和措置発表に踏み切る可能性もある。
株式市場では、欧州発と米国発の売りの共鳴現象が懸念され、マネーが債券市場に流れる傾向は変わるまい。外為市場では、ユーロと米ドルのどちらが強く売り込まれるか。相対評価としてのドル・ユーロのレートに注目だ。そして、金市場では、欧州発の売りと米国発の買いが拮抗しそう。筆者の金価格の見立ては、"sell in May(売りの5月)"が終わり、FRB、ECBそして中国人民銀行と日銀の追加的金融緩和競演シナリオで、6月は上値を試す展開と見る。ギリシャ選挙ショックがあっても、リスク回避の下げは一過性に留まろう。ギリシャのユーロ離脱は起こるとしても、今年末から来年初めにかけてで、未だ先の話である。

さて、週末はテレビ東京の「マネー羅針盤」に生出演しましたが、ギリシャ問題を語るには時間が足りなかったので、今度は「モーニング・サテライト」でジックリという話も番組後に出ました。現地アテネから電話生レポートなど面白そう(笑)。
番組最後に例によって金価格動向について聞かれたので「今、土曜日の昼12時。昨晩9時半まではギリシャ・リスク・オフで弱気でしたが、米雇用統計のサプライズで強気に転換しました。」とコメント。
さて、ギリシャから帰国後、翌日に中国出張という成り行きになってしまったので、アテネから直接北京へ廻ることになるかも。それにしても、フランクフルトからアテネへの乗り継ぎ便が満席状態なのにはビックリ。報道では観光客も寄り付かずとか言われているけど、ドイツ(カネ貸す側)の借金取立仕事人集団で席が埋まっているのかな~。
昨日は、来日中のトムソンロイターGFMSのスタッフと食事。マドリッドに住む女性スタッフの現地生話が面白かった。「マドリッドの不動産価格はまだまだ割高。本格的にバブル弾けるのはこれから。みんな今が底だと思って、売り控えているので下がり切らないだけ。二番底という言葉を知らないのか。」ふーむ。スペインやばし!

2012年