2012年4月26日
昨晩のNY市場は、FOMC声明文にQE3言及なしでガッカリ。直後のバーナンキFRB議長記者会見で、追加的金融緩和もアリとの言及で息吹き返し。(マーケットでQE3遠のくという観測を表現する際に、その件は"off the table" テーブルに載っていない、という言い回しが使われていたことを意識して、バーナンキ氏は"on the table" テーブルに載っている、という言い方で答えたわけだ。これは、かなり明確な言及といえる。但し、あくまで米国経済環境が悪化した場合に限り伝家の宝刀抜くも辞さず、という条件つきだ。)
金価格もヨーヨー状態。
FOMC声明前は1640ドル台で推移していたのが、言及なしの失望感で一挙に1630ドルを割り込むまで急落。しかし、"on the table "の一言で1645ドルまで急反騰した。
短時間にこれほど乱高下するのだが、結局はレンジ内の動きに留まる。
これはディーラーたちが、内部規制でリスクを取れなくなっているので、市場の潤滑油(=流動性)が枯渇しているためだ。宵越しのオーバーナイト・ポジションを取れない。所謂デイ・トレードに徹し、その日のうちにポジションはスクエアに(チャラに)せねばならぬ。そこで、NY金先物市場の建玉も細ったままだ。
これは金融規制法(ドッド・フランク法)がジワリ効いているからであろう。「銀行許すまじ」の世論が強まり、銀行業務が厳しく制限され、自己勘定売買も縮小、撤退の方向が主流だ。更に、米国商品先物取引委員会(CFTC)は、投機マネーが原油・穀物価格の変動を増幅させているとの批判を受け、規制に乗り出している。金は「役にたたない」ので、金価格が高騰しても庶民の日常生活では痛みを感じにくく、従って、政治的問題にもなりくいことが幸いして、規制がかかりにくい。それでも、マーケットでリスクを取るべきプロの数が減ってくると、顧客から大型の売買注文が入るや、「椅子取りゲーム」状態になり、プロは如何にリスクを転嫁して、自分に火の粉がかからないように行動する。その結果、売買注文が、右から左でパスされるたびに、価格変動が加速してゆくわけだ。
顧客はコモディティー(商品)に熱い眼差しを向けるが、それを受ける業界が規制の網の中でもがいている。
なお、プロがリスクを取れなくなっていることを勘違いして、個人投資家もリスクを取れなくなるかのような風説も流布されているので注意。