豊島逸夫の手帖

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イランとECBが支える金価格

2012年1月5日


ホルムズ海峡緊張により、原油急騰。金も連れ高、1600ドル台回復。
しかし、中東関連の地政学的要因は、一過性に終わりがち。
それより、ECBのLTRO(金利1%の3年物無制限資金供給オペ)のほうが、ジワリ効いている。当座は、信用収縮の「止血剤」となるが、欧州系銀行がECBからユーロを調達して、運用するキャリートレードが成立することにもなる。
LTROの本来の趣旨からいえば、イタリア・スペイン国債買いで、運用してほしいところ。しかし、それをやると、ソブリン・リスクは短期的に改善されようが、欧州系銀行のバランス・シートが、更に毀損する結果となる。
そこで、「安全資産」で運用するという連想が働く。
また、ECBのバランス・シートも、2兆7300億ユーロに膨張していたことが、昨年末に明らかになっている。米ドルもユーロも「通貨の堕落」が進行すると、「通貨の原点回帰」として、金が買われる。
なお、LTROは量的緩和(QE)ではないが、ECB(欧州中央銀行)が、いずれ欧州版QE1を開始する兆しとも受け取れる。頑なに、QEを拒否し続けたトリシェ前ECB総裁に比し、ドラギ新総裁の金融政策舵取りには、微妙な変化が感じられるのだ。
金市場は、その兆候に敏感に反応しているようだ。
とはいえ、まだ実質新年明けの相場ゆえ、これで金価格持続的上昇開始とは言いかねる。
新年祝い酒の二日酔いには気をつけたい。


なお、昨日の欧米市場では、欧州市場で銀行株が売り込まれたが、NY市場では、銀行株が買われるという現象が見られた。しかし、これをもって欧州経済と米国経済のディカプリング(非連動)を論じるのはいかにも性急。
更に、外為市場では対ユーロでドル高に振れたが、商品価格は上昇という現象も。このような従来の「市況の法則」に反する事例が頻発するのも、最近のマーケットの特徴だ。
欧州債務危機にしても、同じ日のメディアのヘッドラインが、「危機感後退」から「危機感再浮上」まで、二分されている。


スキー場で、雪の一日。昼ごろに、やや薄日がさしてくる時間帯があったりする。でも、午後はまた深雪。昨日の欧米市場見つつ、そんなイメージを抱いた。まだ、スキー・モードで社会復帰できていないかな(笑)。
なお、1月3日放送された「ガイアの夜明け」金特集では、いろいろな映像が面白かった。かなり怪しげな人たちもいたけど。今日の日経電子版「金つぶ」は、番組冒頭に映った、丸の内女子会の感想。

2012年