豊島逸夫の手帖

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デフォルトを望むアテネ市民

2012年2月13日

1148a.jpg今や、日本の一般メディアにも、アテネで暴徒化したデモ隊と警察衝突の様子が映像で流れる。その通りは、10日前、添付写真のように、女子高生たちが群れる渋谷のような街であった。
ただ、断っておくが、ギリシャ全土が不穏な状況に陥り、治安が悪化しているわけではない。「市内数か所に拡散しているものの、市民の殆どは通常の生活を営んでいる」とは、筆者のアテネ・コネクションからの報告。
筆者も来週は再び、アテネに向かう予定である。
その目的は、日本人として国家が破たんする現場を、この目で確かめたいからであるが。
今週は、ギリシャ議会が緊縮法案を可決したという報から始まった。
議会周辺では過激派が抵抗運動を続けるが、サイレント・マジョリティー(もの言わぬ多数派)にはデフォルトを回避するために更なる緊縮を受け入れざるを得ないなら、いっそデフォルトしてしまえばよいと考えている人たちも多い。更に、デフォルトしてユーロを離脱すれば、自国通貨ドラクマを切り下げる通貨安競争に参戦することで、自国製品の国際競争力も強まる。
それに対して、国内の多くの良識派は当然、強く反論する。ギリシャの銀行は、ユーロ建て債権が、超弱小ドラクマで返済されることになる。自国通貨暴落は、国内物価暴騰をもたらす。債務不履行という前科を背負ったギリシャ政府は、債券市場からの資金調達の道を閉ざされる。
しかし、明日の生活に窮するアテネ一般庶民に経済論理まで考える余裕はない。
そもそもユーロ創設の時点から、ギリシャとドイツの言い分は割れていた。
ドイツは、欧州がまとまって地域共通通貨を持つという構想にギリシャも仲間に入れてくれというから入れてやったのだという。
ギリシャは、ドイツが欧州としてまとまった地域共通通貨を持つという構想の旗を振り、我が国にも勧誘に来たから乗ってやったのだという。
元々、「同床異夢」だったのだ。
この溝を埋めることは不可能に近い。
この問題は両国の瀬戸際政策の応酬が、まだまだ続くと思う。当面のデフォルトは、IMFなどのブリッジ・ローン(繋ぎ融資)により回避される先送りされるのではないか。
担保の一部がアテネ地下には大量に眠っている。
写真はアテネの地下鉄駅構内に展示される歴史的発掘物の数々である。どれも他国の博物館では一級展示物となるような品ばかり。これが全て地下鉄建設工事現場から出てきたものだそうだ。アテネの地下にはどれだけの「お宝」が埋蔵量として眠っていることか。この国ごと「お宝探偵団」に出したら、どんな値がつくことか、などと不謹慎な想像をしてしまった。

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2012年