豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 消費税増税で金が儲かるってホント?
Page1246

消費税増税で金が儲かるってホント?

2012年8月22日

お盆開けて、一般メディアから「消費税アップで金が儲かる」のかという取材が急増中だ。今週発売中の週刊ポスト140-141ページにも記事。今朝もテレビ朝日のやじうまテレビで「経済評論家」として住宅、白物家電、ブランド品など増税前に買っていい商品、悪い商品の話をした。最後に、金はどうか、との問い。「ホントに儲かるの?」
ちょっと待って!それは条件付きの話だよ、と釘を刺している。
(でも、そこは放送されず。)

貴金属商の金の店頭買取価格は「税込買取価格」と表示される。買取価格が仮に1グラム4000円とすれば、現行の消費税5%が上乗せされて4200円で買い取られるのだ。その消費税が8%に上がれば、税込買取価格の上乗せ分もスライドして上がり4320円となる。その差は1グラムあたり120円。
いま5%の消費税を払って金地金を現引きして、8%になったら売れば、その分オトクということにはなるのだが、これは、あくまで金価格が同じ水準という仮定の上での話だ。例えば金価格が3800円に下がれば、8%上乗せされても、税込買取価格は4104円に下がってしまう。

更に、店頭金価格には、販売価格と買取価格の間に値差(スプレッド)がある。海外旅行用にドル札を買うときの売り価格と買い価格の開きと同じ仕組みだ。金の小売スプレッドは1グラム80円ほど。業者間市場の実勢価格(中値)は、販売価格と買取価格の間にあるので、80円の中の一定部分が実質的手数料となる。この分も割り引いて考える必要がある。
それから、金地金でも小型と言われる100グラム(現在40万円以上)には、販売時と買取時に、それぞれ一個当たり数千円~1万円以上の別途手数料が上乗せされる。
故に、消費増税の恩恵を受けるのは、現実的には一個数百万円単位の1キロ・バーとなろう。

この話は、「消費増税による儲け話」というより、金現物を買ったり金ETFから金地金を現引きした場合に将来的に手数料が戻ってくる程度の感覚で受け止めておいたほうが良かろう。
それでも長期的に消費税が欧州並みの水準にまで上がる可能性を考慮すれば決して無視できる額ではない。

2012年