豊島逸夫の手帖

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米国債保有、中国増加、日本減少

2012年9月19日

18日、国別米国債保有量の最新統計が、米財務省とFRBから発表された。ここでは過去一年の推移を吟味してみたい。

2011年7月 2012年7月
中国 1314.9 1149.6 (10億ドル単位)
日本 885.2 1117.1
原油輸出国* 244.0 262.3
ブラジル

219.1

253.0
カリブ海諸国** 177.9 246.2
台湾 147.6 196.1
スイス 118.5 190.1
ロシア 141.7 154.3


*エクアドル、ベネズエラ、インドネシア、バーレーン、イラン、イラク、クエート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE、アルジェリア、ガボン、リビア、ナイジェリア
**バハマ、バミューダ、ケイマン諸島、オランダ領アンティル、パナマ、英領バージン諸島
1位の中国は過去1年間に徐々に保有を減らし、日本は急激に保有を増やしている。
中国は膨張する外貨準備の中でドルとユーロ保有を減少させ、円と金の保有を増やしている。他の新興国が軒並み米国債保有を増加させているが、一人わが道を行く中国である。
日本は、粛々と米国債の保有を増やし、金の保有は一切増やしていない。金準備増強という行為は米ドルへの「不信任投票」である。従って、「ともだち」作戦のパートナーに対する政治的配慮が働いている。更に、円高抑制の市場介入(円売り、ドル買い)の結果、米国債の保有が増加する構図となっている。
この2か国で米国債保有の42%を占める。

なお、スイスが増えているのは、ユーロ売りの反対取引として、避難通貨としてスイスフラン買いが急増する中で、スイス国立銀行がユーロ・スイスフラン・レートを1.20に実質固定する市場介入(ユーロ買い、スイスフラン売り)を実施しているため。今やスイスの外貨準備は3000億ドルを超え、その中でも、ユーロ保有が急増している。そこで外貨準備の他通貨分散を図るため、米ドル、円、豪ドルなどの保有を増やしている。今や、スイス国立銀行(SNB)は外為市場の中の台風の目である。この件は、新著「金読本」(日経マネームック)の「スイス、欧州債務危機の余波でバブルか」に詳述した。
総じて、この表を見ると、ビッグ・マネーの受け皿として米国債以外に選択肢が極めて限定される実態が明らかである。
米国債を「安全」と感じている市場関係者や投資家は少ない。この現象は「流動性への逃避」といえよう。

なお、日経ウーマン連載コラム「不安を生き抜く女子のための貯"金"講座」更新しました。「金箔パックってホントに価値あるの?」

http://wol.nikkeibp.co.jp/ >スキルアップ>マネーへ。

2012年