豊島逸夫の手帖

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ロムニーなら円安、対中強硬路線

2012年11月6日

日本経済にとってオバマ、ロムニーどちらが好ましいか。
答えはロムニー候補であろう。同氏は決して親日派ではない。むしろ日本に対しては冷淡に近いスタンスさえ感じる。

しかし、ロムニー大統領になった場合には、ドル高・円安と対中強硬路線への政策バイアスが強まるだろう。円安と反中。今の日本経済・政治にとって心地良い響きを持つ言葉だ。
ドル高・円安に市場が動くと予想される根拠は、ロムニー氏率いる共和党の徹底した現FRB批判。バーナンキ更迭論。そしてQE否定論。QEが市場でドル安要因とされる以上、QE亡き世界は、ドル高に振れ、結果的に円安をもたらす。
そして、ロムニー氏は筋金入りの反中派。中国を「為替操作国」と決めつけ、自身のウェブサイトにも「中国の軍事的脅威に対し連合国との協調路線の必要性」を説く。尖閣問題に関する発言は記録に残っていないが、仮に、中国による尖閣の実効支配が切迫した懸念となれば、ロムニー氏のほうが、日本側から見れば頼もしいパートナーに映るのではなかろうか。
米国、インド、日本の三カ国による中国包囲網構築が現実味を帯びるかもしれない。

オバマ大統領とガイトナー財務長官は、「ジャパン・パッシング=日本の頭越しの北京詣で」で米国債セールスに力を入れてきた。
尖閣問題についても、国有化に際して日本側から事前根回しが無かったことで、オバマ政権は、やや日本を突き放したかのような言動も目立つ。この日本外交の失態を「振りだしに戻す」には、新政権への交代がチャンスとなろう。職業公務員が支配する日本と異なり、政治家が任命する政治任用職(ポリティカル・アポインティー)が事務方を仕切る米国では、大統領が変われば、現場の顔ぶれも一新される。
果たして、ロムニー大統領が実現するか。形勢は僅差ながらオバマ優位である。

5日本欄「オバマ大統領再選へ二つの神風」で詳述したとおり、オバマ陣営はハリケーン・サンディに関して「天災は現職有利」という「選挙の法則」の恩恵を享受し、加えて2日発表の米国雇用統計では予想を遥かに上回る好数字にも恵まれた。
ボクシングに例えれば最終ラウンドの終了寸前で2ポイント稼いだ感じだ。
マーケットの反応は、オバマ再選なら「織り込み済み」。ロムニー選出ならばサプライズ感による円安加速。
金価格については、今朝の日経朝刊マーケット面記事参照。

なお、本日(11/6)テレビ朝日「ワイド・スクランブル」にビデオ出演で、米国大統領選挙解説の予定(昨晩、六本木にて収録)。昼12時過ぎの万里の長城事件の後で(別のニュースで飛ばされなければ)。

2012年