豊島逸夫の手帖

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上海の中国人向けセミナーでどんなこと話したか

2012年9月6日

今日のマーケットは、ECB理事会待ち。
そこでブログは、先日上海貴金属セミナーで行った中国人投資家向け講演を採録してみた。↓

さて、皆さん、今年は金市場で歴史的な変化が生じています。
それは、金の年間需要量ランキングで、これまでダントツ一位だったインドが、遂に中国に抜かれることが確実になったのです、
2012年は、中国が、世界の金の需要でも生産でも世界一となるわけです。
まず、数字を申しあげましょう。
最新の世界金需給統計によると、2011年7月から2012年6月までの国別金需要量は、第一位 中国 786トン、第二位 インド 773トンとなっています。
2年前くらいには、インドは約900トン程度、中国は約500トン程度でした。
わずか2年で、400トンもの差が逆転されたのですね。

いま、欧米の金市場では、中国やインドの新興国経済が減速しているので、金の需要も減るだろうと思われています。
たしかにインドはかなり減っています。しかし、中国は短期的には7%程度減っていますが、2012年通しては800トンを上回り、増加すると見込まれます。
それは、なぜか。中国の国内金取引が段階的に自由化され、個人投資家の金売買が出来るようになったからです。
規制緩和による増加が、経済減速による減少を相殺して余りあるということですね。
一方、インドは、干ばつ、大停電、そして、経常収支が赤字なので、金輸入への課税が強化されているので、金需要が減っているのです。
その結果、2012年も中国インドの二か国を合わせれば1600トン近くを買い占めることになりそうです。
年間の金生産量が2800トンほどですから、その約6割を買ってしまうことになります。
新興国が経済減速といえど、金の下値を支えているのですね。
私は6月のギリシャ再選挙の前日に、北京に居ました。
ちょうど、欧米市場はギリシャ危機ということで、リスク回避の売りで、株も金も売られていました。
その同じ日の北京最大のゴールド・ショップは大混雑で、多くの人が「価格が安くなった」ということで金宝飾品を買っていました。
その店の中は、ギリシャとは全く関係ない世界で、熱気に包まれていました。
最後に、欧州債務危機で金が売られることがあるので、説明しておきます。
実はリーマンショックの後にも、同じように金が暴落しています。
経済危機になると、皆が怖くなって、リスクを取らなくなるのですね。株でも金でも売って、現金で持とうとします。
しかし、その売りは一巡すると終わります。
そこで安くなったところを、新興国が買うわけです。
なお、新興国の買いは個人投資家に加えて、最近は、中国、ロシア、インド、韓国、タイ、メキシコ、トルコなどの政府が買う例が増えています。
1990年代は、欧州の政府が金を毎年500トン以上、大量に売却して、金価格が250ドルにまで下がりました。
それが2011年には、新興国政府が400トン以上の金を買っています。
政府部門が500トンの売りから400トンの買いに転じたことは、その差が900トンということで、金価格上昇の大きな理由になっています。

2012年