豊島逸夫の手帖

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ダントツ世界最下位の日本金投資量

2012年4月17日

先週、2011年世界需給統計がロンドンで発表された。
そこでひときわ注目されるのが、国地域別の金地金投資需要量一覧。
(単位は全てトン)

欧州 317.3
北米 17.7
イラン 40.4
インド 288.0
中国 250.3
タイ 108.6
ベトナム 87.8
(トムソンロイターGFMS社統計)


など、軒並みプラスの数字が並ぶ中で、唯一、日本だけがマイナス47.2トン。要は、投資家からの買い取り量が断然、新規買いを上回ったわけだ。
昨年夏、行列6時間待ちで貴金属買取店に殺到した現象が、世界最大級の規模であったことが統計数字で確認されたことになる。
それでは、なぜ、日本だけ、それほどに、という疑問が当然湧いてこよう。

  1. 世界各国はおしなべて実質金利がマイナスであるが、日本は実質金利が相対的に高い。「日本、実は高金利」と題する日経記事を思い出す。デフレの日本では金よりキャッシュなのだ。
  2. 日本の国力急低下。金は富の集積するところに集まる傾向がある。過去10年の金地金投資量の推移を見ると、その差が歴然としている。
    (単位はトン)
2002 2011
欧州 マイナス34.8 317.3
インド 67.0 288.0
中国 2.2 250.3
タイ 12.1 108.6
ベトナム 34.9 87.8
日本 100.0 マイナス47.2

実は2002年時点では、日本はダントツの世界一金地金購入国だったのだ。対して、新興国の急増ぶりが凄まじい。欧州ではリーマンショックを機に、それまでは時代遅れと言われた金現物投資が急復活した。なお、米国は、元来、先物主体の国である。


こういう見方も出来る。
2002年の年平均金価格は309.68ドル。2011年は1571.52ドル。日本の投資家は安値で大量に金を買い。高値ではしっかり売っているわけだ。非常に優秀な長期投資家集団と言える。
思いおこせば、90年代は金価格が一貫して下落する長期低迷の時代。「金の輝きは失せた」「有事の金は死んだ」などのヘッドラインが欧米メディアで踊るなか、日本人は粛々と「安いから」という単純明快な理由で買い続けたわけだ。当時、欧米のアナリストたちから、「なんで日本人は金をそれほど買うのか」と訝しげに(信じられないと肩すくめながら)問われたものだ。

やはり、日本人投資家は短期売買より長期投資のほうが民族DNA的に合っているという事の一つの証とも言えよう。

2012年