豊島逸夫の手帖

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個人でもプロに勝てる金市場

2012年6月22日

ギリシャ・リスク後退で「安全性への逃避マネー」が金市場から流出。更に、期待したQE3もFOMCでは言及されず、失望売りを誘発。昨晩の金市場は、株同様に下げ続けの一日であった。特に1600ドルの大台を大きく割り込むと、後は、ストップ・ロス(損切り)売り発動の連鎖。1560ドル台まで一気に下げ、そのまま反発することなく引けた。
ドル高、そして、米主要銀行格下げ予測(引け後にムーディーズ社から発表)も、売りに拍車を掛ける結果に。

振り返れば6月の金価格は、1日発表の米雇用統計急激悪化(非農業新規雇用者数69,000人)を受け、1550ドル台から一気に1630ドル台まで急騰して始まった。QE3への期待感が急速に高まったのだ。
しかし、20日のFOMC声明で、明確なQE3への言及は見られず、金価格の値位置は1日の雇用統計発表前の水準に戻ったわけだ。

ギリシャ再選挙とFOMCの二つのビッグ・イベントを終え、市場は当面の大きな材料出尽くしの感あり。スペインは燻るが、欧州債務危機そのものが市場の材料としては陳腐化しつつある。
下支え役の新興国需要も、中国以外は経済減速の影響で湿りがち。
1600ドル台を試した後だけに、次は、1500ドルのダウンサイド(下値)を試す動きとなりそう。そうなれば値ごろ感から筆者も買う。
市場の潮流としては、昨年1900ドルを突破して史上最高値をつけた後の調整局面が未だ続いている。米ドル・ユーロ不安は容易に解消されず、公的セクターが外貨準備として金購入を粛々と進めているので、相場が大崩れすることはない。
個人投資家は、NY先物市場の取り組み変動など短期的材料には惑わされず、「金融政策不信を映す金価格」を見据え、ジックリ行動すべき。プロは決算期があるから、QE3の思惑で短期的売買を繰り返し、価格の短期的変動を増幅させる。しかし、個人投資家に決算期はない。じっくり待てる。これこそプロが羨む最大の武器である。

2012年