2012年8月3日
昨晩、ECB理事会後の失望感にマーケットが揺れた後、ニューヨークの市場関係者たちとのチャットで、日本経済についてのニューヨーク・タイムズ記事がひとしきり話題になった。
「円高が日本の世代間格差を拡大している」との見出し。
たしかに、円高デフレは現役世代の雇用・収入を直撃し、退職世代は物価下落による恩恵を受けやすい。円高の痛みを若い世代ほど強く感じることになる。
しかし、円高で株価が下落することで、個人金融資産保有が集中するシニア世代も痛みを感じている。例外といえば、タンス預金主義者の高齢者たちか。運用しなければ、株価下落の直接的影響は受けず、日用品の物価下落のメリットは享受できる。しかし、彼らとて、自分の受け取る年金の運用は円高で痛んでいる。
一方、現役世代、特に20-30代の夫婦たちが、ただ手をこまねいて円高を傍観しているわけではない。先日、一般財団法人インターナショナル・ウーマン・クラブに属するグローバル・ママ・ネットワークというお母さんたちのネットワークに招かれ講演した。「世界のどこにいても自分の能力を開花させ、逞しくいきていける子供を育てたい」と願うママたちの集まりである。
華僑、印僑の如く、和僑を目指す人たちにとっては、円高こそ海外移住のチャンス。
まだまだ少数派ではあるが、今後、円高が進行すれば、若者の海外進出が加速する兆しは見られる。
既に、マネーの流れの面では、経常収支黒字が貿易収支より所得収支黒字で支えられる構図になりつつある。つまり、海外での投資収益で稼ぐ経済の体質へ移行しつつあるわけだ。
人の流れが外に向かうのは当然の経済環境である。
若者向け「海外移住セミナー」なども盛況と聞く。
筆者の周辺でも、サラリーマン生活に見切りをつけ、蓄えを元にアイルランドなどに海外留学するケースが出てきた。
子供をインド系のインターナショナル・スクールに入れたいという勇ましいママもいる。たしかに、新興国の環境で育てるほうが、子は逞しく育つだろう。
ロンドン・オリンピックの日本水泳陣の活躍ぶりには、日本の若い力の迸りを感じる。昨晩は入江選手と鈴木選手が相次いで銀メダルを獲得した。
銀は若者に似合う。
金ほどの財力はないが、20ドルの銀が50ドルに大化けする可能性を秘める。ホットな熱伝導性に優れ、ハイテク需要が見込める素材だ。
そして、次は金を目指し頑張るというモチベーションも高まる。
円高による世代間格差を若者たちはただ座視しているわけではない。
さて、金価格は、ECB理事会で期待されたスペイン国債買い取りなどの具体案が決められず、失望感からユーロが売られドル高となり、追加的金融緩和期待の投機マネーは金売りに向かい、金価格は1580ドル台まで下落した。ドラギECB(欧州中央銀行)総裁発言が、国債買い取りに関して確定的表現を用いず、"may "(するかも)という単語を使ったことが、特に失望感を誘った。
後は、今晩の米国雇用統計を待つのみ。
さて、明日8月4日(土)の昼12時からテレビ東京系列、及び、BSジャパンに生出演。番組名は「マネーの羅針盤」。但し、明日のトピックは「トラベル」。旅行の最新事情について。トラベル・コメンテーターになりました(笑)。まぁ、仕事であっちこっち旅してるからね。
そして、8月6,7,8日とシンガポール出張。9月7日発売の日経ジェフムック用にジム・ロジャーズと対談。今回は、69歳にして5歳の娘を持つパパとしてのジムにフォーカス。娘に金製品を残す父の気持ちなどを語る予定。
新興国経済減速の実態を6月は北京で見てきたが、今回はシンガポールで見てくることも、もう一つの目的。これについては次回の月刊日経マネー連載コラム「豊島逸夫の国際経済深層真理」に書く予定。