豊島逸夫の手帖

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ユーザーも投資家もFB疲れ?

2012年9月13日

フェイスブックCEOザッカーバーグ氏のサンフランシスコ・ハイテク会議に於ける公開インタビューを通しで見た。IPO後、初のお目見えということで注目されたが、市場は好感し、昨日のNY市場では株価が7.73%上げ、20.93ドルと20ドルの大台を回復して引けた。
インタビューで特に株主が最も知りたい具体的収益増強策が発表されたわけではない。語り口も、Tシャツ姿の若者が早口でまくしたてる、という感じだ。それでは、なにゆえ市場が好感したかといえば、とにかく、CEO自身が自分の言葉で率直に気持ちを語ったからであろう。
まず、いきなり、株価が半分前後に下がったことを突かれ、「Just get right into it! (いきなり来たか!)」と切り返し会場の笑いを誘う。そのうえで、株価については「disappointing!( がっかりさ!)」と率直に気持ちを表現した。「株主にフレンドリーではない」という評判を意識してか、頻繁に使う「人と人をconnect (結ぶこと)がFBの使命」という表現の後で、「同時に、社員のチームワークで、build business (ビジネスを構築し)、make much money (たっぷり儲けること)もミッション(使命)だ」と語った。ここが、従来と異なる発言トーンゆえ、「ザッカーバーグ氏もようやく株主にも顔を向けた」と受け止められたわけだ。要は、オリンピックではないが、「会議に参加し、ステージに登場すること」に意義があったのだ。
その後の発言も、例えば、「私はあまのじゃく"perverse"」と言い切る。この単語は「変態」とも訳されかねないニュアンスがある。「なぜなら、過大評価されるより過小評価"underestimate"されたいと思うから。そのほうが、次の一手の選択肢が広がるゆえ。」というココロであった。
下げ続ける株価。何らかの説明を待ち焦がれ待ち疲れた株主。沈黙を決め込んだCEO。そこに、このようなTシャツ姿でフランクに語る若者CEOの姿は、株主の希望をつなぐには十分な効果があったようだ。
同氏はこうも述べた。「スマホ・ユーザーはデスクトップ・ユーザーより活発にFBを利用する。1週間7日のうちで6日はFBの画面に向かう確率が、スマホ組のほうが倍高い。(それゆえスマホ分野開拓の戦略的優先順位が高いことを強調)。」
そう、FBユーザーも1週間に6日は小さなスマホ画面と向き合い、目は疲れ、女性の肩は凝り、FB疲れ症状を呈し始めているのだ。その反動で、短いツイートで済むツイッターへのシフトとか、更に、「やっぱり生の会話がいい」という原点回帰現象さえ起こり始めている。
そして、株主も持ち疲れてきた矢先のこと。ソーシャル・メディア関連株は、将来の夢を買う部分が大きく、結果が出るまでに紆余曲折もつきもの。長期保有の忍耐が要求される。
FB社員も下落を続ける自社株保有に「持ち疲れ」、ロックアップ期間(売却禁止期間)があけた途端にかなりの株数が売りに出されているという。
更に、新規上場初日のナスダック・システム・トラブルによる取次業者の損失問題も未だ解決されず、くすぶっている。
新著でも、「ニューヨークの鯨はフェイスブック?」と題して書いた原稿を紹介したが、そこで、USBが3億5600万ドルの損害を被り、ナスダックも一定の額について補償の意志を表明していることを述べた。
それにしても、USBのシステムが陥ったループ現象は怖い。取引所に買い注文を発信した後、確認が来ないと、その買い注文が確認されるまで何回でも「再送」してしまうのだ。そのループ現象を止めるには、最終的に誰か人間が問題を察知してシステムをオフにせねばならぬ。止まるまで送り続けた買い注文の山は、取引所側のシステムが回復した瞬間に全て実行されてしまう。その結果、USBは、初日に顧客から受けた買い注文の50倍に相当する4000万株を買う羽目になり、この過剰購入分は、一株当たり8-9ドルの損失で売却を余儀なくされたという。
ナスダック側の対応の遅れにフェイスブック社も一時はニューヨーク証券取引所に上場移管する事を検討、との噂さえ流れた。
フェイスブック上場初日は、未だ終わっていない。

さーて日本時間明朝、いよいよFOMCとバーナンキ記者会見。
サイコロの目はどちらにでるか。私も含めて専門家総動員であれこれ予測して、取材で聞かれれば意見は述べますが、ぶっちゃけ、全く分かりませーん(笑)。
それから、プラチナがまたまた急騰して1640ドル台へ。金との値差が100ドル以下に縮小。
南アの鉱山ストライキが他の大手鉱山に波及。ドイツのESM合憲判決は欧州債務危機の(目先の)懸念後退を示唆することもプラチナには好材料。金プラチナの値差が200ドル以上に拡大すると広がり過ぎ。100ドル以下に縮小すると縮まり過ぎという感じかな。いずれにせよ、鉱山ストライキという材料に継続性はないから、サプライショックで上がる相場は軽くスル―。上にも下にもプラチナのボラティリティー高過ぎ。欧州経済もマイナス成長に変わりはないし。

1262.jpg新著「不安を生き抜く金読本」(日経マネームック)より
制作者 香月かづあき

2012年