豊島逸夫の手帖

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スペイン国債を買う人たち

2012年6月21日

スペインに10年カネを貸すとして、貸し倒れのリスクを考えると金利が6%では合わない。7%なら考える。
これが今のマーケットの気持ちである。
実際に国債市場では、スペイン国債に7%の金利で買い手がついている。
では、いったい誰が買っているのか。
7%の高金利に惹かれた個人投資家ということも考えられるが、欧州債務危機悪化の中で敢えて逆張りに出るのは、やはりヘッジファンドであろう。
そして、新たに有力な買い手候補が昨晩浮上した。
EFSF(欧州金融安定化基金)である。
その可能性を示唆する報道が市場に流れたタイミングが、図らずも(或いは図ったのかもしれないが)、FOMC声明発表直後であった。「ツイスト・オペ、年末まで延長」というほぼ事前予想通りの内容で、市場が淡い期待を抱いていたQE3の文言は今回も見当たらず。株式市場では失望感からダウが急落。金価格もストンと落ち1600ドル割れ。そこに、搦め手から、「メルケル首相、スペイン・イタリア国債購入計画に前向き」の報道が流れ、ダウが一気に急騰したのだ。金価格も1610ドル以上へ急反発。
当のメルケル首相は「私の知る限り、そのような具体的計画はない。」と否定。「然し、二次流通市場で国債を購入する可能性はある。」と報道陣にコメントしている。
なお、EFSFのガイドラインには「EFSFは、例外的措置として、厳格な条件つきで、国債発行市場へ介入できる」と明記されている。
このガイドラインにヘッジファンドは注目し、利回り7%のスペイン国債を買っているのだ。もし、スペインの銀行・財政危機が更に悪化すれば、EFSF(或いはESM)が出動して買い支えてくれるという読みがあるのだろう。
筆者が冒険投資家ジム・ロジャーズ氏と対談したときに、「ユーロも敢えて買っている。ドイツがついているからね。」と語っていたことを思い出す。同じ発想であろう。
なお、南欧国債買い取りにEFSFの名前が挙がるのは、金融政策の本尊であるECB(欧州中央銀行)が、国債買い取りの量的緩和政策に慎重な姿勢を崩さないからだ。
米国の中央銀行であるFRBも、追加的金融緩和(QE3)という切り札を温存しているのは、「これ以上、カネをばら撒いても、経済成長をもたらすような生産的経済活動にカネが廻ってゆかない」という強い批判を意識してのことであろう。
それでも市場がQE3にこだわるのは、「10万円、或いは1000ドルを手にしても、その殆どは貯蓄されるだろうが、それが100万円、1万ドルとなれば、さすがに一部は消費に廻るであろう」という淡い期待があるからだ。
しかし、消費されずに銀行で貯蓄されるマネーが、結局、国債で運用されるような実態を見ると、何とも切ないものだ。

話はガラッと変わるが、北京出張中に寄った朝市で旬のライチが山積みで売られていた。北京の主婦たちが群れて買い求めているのだけど、ひとつひとつ良さそうなのを選んでビニール袋に入れている。暫く眺めていたが、その判断基準がいまいち分からぬ。
実際に色々食した感じでは、やや緑がかった若いライチのほうが
ジューシーで旬の味がするのだけど。どうかな・・・。

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その朝市だけど、これが、めっぽう安い!
たまたま来ていた日経北京支局の人が、今日(日曜)の昼食と夕食の買い出しといって野菜や肉など沢山買って、全部で70円ぐらい。100円の重みを感じた。アテネでは1ユーロ(=100円)の重みを感じたけど。
その点、日本では100円ショップがあるが、食料品で100円の重みは相対的に軽いね。
妥当な為替レートって幾らなのか、改めて考えさせられた。

それから、昨日、今日と日経朝刊に割合大きくプラチナ関連記事が出て、私のコメントが載っているけど、要は、長期的には今、プラチナは買いだと思うわけ。短期的には未だドカンと下がる局面もあろう。なんせ流動性の乏しい市場だから。でも、そういう投機的変動は我々プロでも予測できない。だから、長い目で見て、金より安いときは買って忘れて(buy and forget)保有しておくのが、いずれ正解だと思う。金プラチナ逆転現象は未だ当分続くけどね。(そこで、いつまで続く、と聞かれても分からないよ。)

2012年