豊島逸夫の手帖

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危機的状況の日中関係、付き合いの勘所は

2012年9月12日

「次回上海にお越しいただく時期は当分未定となりました」
筆者がアドバイザリー業務で定期的に接してきた中国系金融機関から、昨日舞い込んだメールである。
「あの上海セミナーも今月開催であったら、日本人講師登壇はキャンセルになっていたでしょうね」
これも昨日届いたメール。先月上海で中国人個人投資家400名相手に講演したセミナーの関係者からである。
8月25日開催のセミナーは写真の如く、盛況且つ笑いの絶えない和やかな雰囲気であった。
しかし、今や、激変。
筆者と中国市場の関係は、2000年に上海金取引所創設構想が発表されアドバイザーとして招へいされた時から始まる。その後、中国大手商業銀行に金業務が解禁された時点からは、銀行の貴金属業務の指南役として、行内インフラ作りを手伝ってきた。「金」という特殊な分野を通じて、中国の「奥の院」への出入りを許されてきた、とでもいえようか。
その経験から見ると、今回の尖閣国有化に対する中国側の反発はこれまでの反日感情の中でも最大級といえる。
今後も中国側からは強い非難の論調と対抗措置が続くであろう。
「瀬戸際」まで行きかねない危うさがある。
しかし、ここが中国側との付き合いの勘所だが、このような局面で日本側の主張を緩めてはならない。下手な「遠慮」を示せば、それこそ、「遠慮なく」交渉相手側を突いてくるのが中国の常道。お互い声高に激しく論じるのが中国流交渉であり、「おとなしい」相手は「隷属的」と決めつけ見下す。
中国だって、経済的には苦しい立場なのだ。(新著「不安を生き抜く金読本 日経マネームック」の中の北京現地ルポで、中国経済の地力と弱点を総括した。)正直、領土問題に深入りしている余裕はない。唯一、領土問題を国内的に利用するとすれば、低所得者階級の不満のはけ口として、反日デモを「適度に」許容することだろう。先日の北京での日本大使公用車襲撃事件は、北京名物交通渋滞の中で、公安の盲点を突かれたアクシデントであった。当局も内心、事後措置を持て余したに違いない。しかし、「適度」のガス抜き効果もあったはずだ。
筆者は、今後、瀬戸際までいっても、破滅的な事態に至るとは全く思っていない。しかし、振り上げた拳の落としどころの模索は続く。その過程では、かなり危機的な論調が繰り返されよう。執拗な反論には執拗に反論せねばならぬ。「冷静な対応」は肝要だが、論調は厳しく維持すべきだ。そして「前言を翻す」ことだけは避けねばならぬ。日本側も中国側も政権交代期。領土問題は国際問題だが、特に日本側の最大のリスクは国内政治空白である。
なお、添付写真は
―400名参加の上海セミナー聴衆たち(中国人個人投資家)

1261a.jpg―ユーモアあふれる中国人参加者の質問に大笑い

1261b.jpg―パネルで筆者に反論してきた人たちとも、打ち上げでは乾杯でお互い尊敬の念を交わす

1261c.jpgさて、昨日から始めた日経ウーマン・オンラインでの女子向け連載。今朝は全体アクセスランキングで3位に来たりして、やはり、強い反応を感じています。(朝9時半時点)。
http://wol.nikkeibp.co.jp/skillup/money.html

今日のお題は、「経済危機を生き抜く賢い蓄え方とは」(女子のための貯"金"講座)。
9月26日開催の丸善オアゾでの出版記念講演会も出席比率は、今のところ男女半々くらいですかね。
場所柄、機関投資家のオジサンから、外資系投資銀行のキンポー(金融法人)・ミニスカ・セールス軍団から、団塊世代の主婦まで様々です。男性陣から「男でも参加できるのですか」と聞かれるけど、あくまで女性のセミナー参加増加という社会現象を言っているので、男性参加も歓迎。それから女性は30代という年齢にこだわっている人もいるけれど、これも無用です(笑)。
丸善丸の内本店 Tel:03-5288-8881 で電話予約可。

2012年