豊島逸夫の手帖

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中国「個人消費強化月間」導入

2012年3月26日

輸出・財政出動主導型経済から内需主導へ構造改革が必須の中国。そこで、打ち出した政策が「4月2日から5月4日までを個人消費奨励月間」として、トップ・ダウンで個人にカネを使わせようという「行政指導」だ。中央政府が地方自治体に様々な消費喚起運動を指示するようである。
期間中に各地で「○○○フェスティバル」などの行事が開催され消費ムードを盛り上げる。(元々、5月初旬はメイ・デイの連休に当る。)
「文化的活動、観光、健康分野」などが特に奨励されるようだ。
高級ブランドのアウトレット、ファッション・ブティックなども増やすという。
「エコ」と「インターネット・ショッピング」などもキ―ワードとなるようだ。
徐々に個人消費のレベルを上げてゆこうとの戦略が顕著だが、問題は「笛吹けば踊るか」ということ。
財布の紐まで国家の力でこじ開けようというのは所詮無理筋。
中国人だって本音はおカネをもっと使って生活水準を上げたいのはやまやま。なれど、年金などほぼ無いに等しく、病院の診察の予約券がプレミアムで取引されるほどに社会のセーフティー・ネットが脆弱ゆえ、結局、「不透明な将来に備えまずは貯える」傾向が根強い。
震災前に大挙来日した中国人旅行者たちは、国全体から見れば非常に恵まれた階層なのだ。

筆者は、10年前から上海の金取引所や中国大手銀行貴金属部のアドバイザーとして現地の組織の内部から中国経済の実態を見る機会があった。そこで、「腹を割った話」と積み重ねていると、「おカネを使いたくてムズムズしているけれど、やっぱり貯蓄」という「消費性向の自己抑制傾向」を強く感じてきた。大都市で働く若者なら、マイホーム資金はかなり貯め込んでいる。しかし、不動産バブルでお目当てのマイホームに「想定外」の値がつき手が届かなくなったので、やむを得ず、貯えを当座は投資で運用している例も多い。でも、やみくもに消費に走ることは稀だ。若者といえど、かなり堅い。

結局、「過剰貯蓄、過小消費」という国際経済不均衡上の構造的難問は容易に解決されぬ。
それでも、経済政策が万策尽きた日米欧に比べれば、利下げ余地は充分あるし、強力な財政出動の余力もある。政策の懐が深いので、当面は、「力づく」で難局を乗り切るであろう。そこで稼いだ時間を有効に利用して、社会セーフティー・ネットを如何に構築できるか。中国経済のバブル耐性を強めるための国家戦略実行度が問われる。

さて、足元の金価格は20ドル上急騰して(それでも)1660ドル台。
金曜はNY時間朝10時頃、イスラエルによるイラン空爆の噂が流れ、原油価格が2ドル以上急騰。金も連れ高となった。噂の信ぴょう性は即否定されたが、原油も金も下がらず。「週末にイラン関連でどんな材料が飛び出すか見当もつかず」というので、空売り筋が一斉に買戻しにはいった。イランから派生したショート・カバー・ラリーである。ショート・カバーが一巡すると、フォローの新規買いが入りにくい。欧州からはスペイン国債利回り上昇などの不協和音が聞こえてくるので、常に疑心暗鬼のマーケットはリスク回避の売りモードに閉じこもりやすい。

週末は、大阪で日経プラスワン・フォーラム。「年金不安世代」の若手中心に300人が集まった。第一部は金とギリシャの話。第二部はFPの深田晶恵さんと、日経CNBCキャスター江連裕子さん(アラサ―代表? ← 笑)とのトーク・セッション。セミナー前の事前打ち合わせは筆者のたっての希望で、ディープな大阪の天王寺駅裏、タコ焼き「山ちゃん」!皆、タコ焼きと明石焼きを一皿づく軽く平らげた。(写真)

1172.jpgついつい長居してしまい、会場入りが開始10分前の滑り込み。事務局はハラハラ。
閉演後も、色々いただいた差し入れを食べながら、スタッフ一同、楽屋で軽く打ち上げ。
本当は、終了後、ロビーに出て質問にも答えたかったのだけど、過去の例で、それやると、一人が質問連発したり、個人の運用アドバイスだけ問うてきたりでキリが無いので止めた。質問も、陰謀説に関するような類が多くて、答える気にもならない。
正直、もう少し、まともな質問が、マナー守ってなされれば、双方向の対話も可能なのに、残念!

なお、予告だけれど、お馴染みGFMSのポール・ウオーカーが来日するので4月6日にチャリティー・セミナーを豊島逸夫事務所主催で開催。現在東京駅付近で午後7時から候補地物色中。個人事務所ゆえ、いずれボランティアも募集せねばなるまい。

2012年