2012年3月15日
昨晩の欧米市場では、金が1680ドル台から1640ドル台までほぼ終日一貫した下落基調。堅調であったプラチナも、金の下げに引っ張られる形で連れ安。こちらは1670ドル台まで下げた。金プラチナ価格逆転解消は変わらず。プラチナ価格のほうが30ドルほど高い。下げ幅も金は40ドル近く。プラチナは20ドル弱に留まる。
さて、昨晩の金急落の背景だが、米国経済好転傾向の中で金に逃避していたマネーが、株へ里帰りしつつあることに尽きよう。だからこそ、景況感が良くなれば実需も増える産業用素材のプラチナ価格のほうが底堅いわけだ。
対円でドル高なので、ドル高=海外金安と説明も出来るが、最近はドル高で海外金も上昇という「市況の法則」に反する局面も頻発しており、ドルと金の相関が薄れているので注意が必要だ。
なお、円安なので円建て金価格の下げはかなり相殺されている。これまでは、円高で海外金価格の上昇が相殺されることが多かったので、実に対照的な値動きだ。
欧米市場でも、各国通貨建ての金価格を比較すると、円建て金価格のパフォーマンスが際立つので、経済番組などで米人FPが円建てのチャート説明するシーンが見られるほどだ。
そして、今回の下げの過程でもうひとつ見逃せないのが、インド中国の実需の出方が昨年に比し鈍いこと。通年で見れば、今年もインドは900トン、中国は700トン以上の金需要が見込まれるので、年間生産量が2800トンの市場にとっては引き続き大消費国なのだが、やはり欧州発リセッションの余波を受けた経済減速が響き、昨年ほどの勢いは感じられない。特に今回のような下げ局面では、昨年であれば、インド中国が待ってましたとばかりに、すかさず大量の安値買いを入れ下値を支えた。筆者も、昨年は「中印の下値サポートは鉄板」と言い切れたのだが、今年は、鉄よりアルミ程度かな、というイメージである。具体的には、1700ドル以上では新興国金市場は音なしの構え。現地の感触としては、1600ドル台前半から1500ドル台を狙っているようだ。懐がやや寂しくなったので、より価格に敏感になっている。
ということは、レンジの下値は1500ドル台まで見ておく必要があるだろう。特に、今後、欧州債務危機が再燃して、先進国金市場でリスク・オフ(リスク回避)の売りが出ると、もう一段の下げとなろう。
チャート的にも200日移動平均線を下回ってきた。今年に入って二度目の現象だ。
ちなみにリーマン・ショック後には、リスク回避の売りが集中して、200日移動平均線から下に大きく乖離したところで大底をつけた。売りのマグニチュードが強いと、市場内には買いエネルギーがマグマの如く蓄積されるもの。それが一気に噴出して、ほどなくリーマン前の水準を回復し、現在に至る上昇トレンドを形成した。
このケース・スタディーは、リーマン・ショック第二幕と言われるギリシャ・ショックが、今後金に与える影響を計る際に参考になる例だ。今後、一度は200日移動平均線を大きく下回るような状況が再現されれば、バネの反発エネルギーで年後半に新高値更新の地合いが整う。逆に、この程度の下げで1700ドル回復するのでは、更なる上昇エネルギーも限定され、調整局面も長引くことになろう。