豊島逸夫の手帖

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あなたならどうする?

2012年1月17日

10年間カネ貸すとしてあなたならどれを選ぶ?

1. イタリアに 金利7.0%
2. フランスに 金利3.6%
3. ドイツに 金利2.0%
4. 米国に 金利1.9%
5. 日本に 金利1.0%


日本人個人投資家「ふーむ。イタリアの金利7%は魅力的だが、なんせゴッドファーザーの国だからなぁ。メディア王で買春容疑者の首相は辞めたけど、果たして、新首相の若頭が組みを纏められるかねぇ。とりあえず、役人出身者で大臣ポストを固めて、手堅く切り抜けようということらしいが。」
イタリア政府「まぁ、ご心配でしょうが、国家再建必殺仕事人集団IMF(国際通貨基金)の厳重な管理下に入ることで、緊急融資も取り付けましたし。我が国出身のマリオ・ドラギ氏がECB(欧州中央銀行)新総裁になって、イタリア国債をせっせと市場から買い取ってくれるでしょうし。まだ素案段階ですが、EFSF(欧州金融安定化基金)がイタリア国債の2割まで返済保証するとか、銀行機能を持って、特別融資してくれるという話もありますし。(まぁ、これは一斉格下げで、危うくなってはきましたけど。)いよいよとなれば、ユーロ共同債という究極の最後の手段も検討中です。イタリア国債の返済は、EU諸国全体で面倒みようじゃないかという有難いお話ですが。」
ドイツ・メルケル首相「ちょっと、ちょっと。いい加減にしなさいよ!冗談じゃないわよ。EFSFとかユーロ共同債とか、うまいこと言って、結局そのツケはうちに来るんでしょ!やっぱりこの際原点に戻って、EU条約を部分改正して、放漫財政に走った国には、厳罰を処すという財政基準を設けねばダメよ。」
日本人個人投資家「よくいうよ。そういうドイツだって、EU創設時のマストリヒト条約で決められた財政赤字の対GDP比3%以内という規定を、平気で破ったじゃん。」
メルケル「そ、それは、いろいろ諸事情があって、ユーロ導入期の若気のいたりということもあるのよ(汗)。とにかく、ユーロ圏全体がドイツに依存症では困るの!うちも政権の政治基盤が、御多分に漏れず、ただでさえ不安定で、私も国内を説得するのに大変なんだから。
それから、最後はECB頼みという発想で、米国のヘリコプター・ベンことバーナンキさんみたいに、マリオにも"ヘリコプターからユーロ紙幣ばら撒き作戦"を、けしかけようとしてもダメよ。我が国は、1919年のワイマール時代に、ハイパーインフレを経験しているから、"通貨の番人=中央銀行の独立性"を尊重することに、殊の外、神経質なのよ。マリオちゃん、金融節度よろしくね。」
マリオ・ドラギECB新総裁「まったく、やりにくいんだよなぁ。つい最近まで、救済される国の中央銀行総裁やってた身なのに、急にご指名で、救済する側のトップに祭り上げられてしまって。マーケットの雀たちは、"ローマ法王ベネディクト16世はドイツ人なのに、欧州金融当局のボスがイタリア人って、なにかおかしくない?"とか皮肉るし。メルケルおばさまだって、建前はああ言ってるけど、本音はどうかな。新種の欧州E―U型ウイルスは伝染性が強く、ドイツ国債まで、利回り上昇症候群が出始めた局面もあったし。今夜あたり電話で、"昼間は皆の手前キツイこといったけど。"とか言い出しても驚かないね。」
日本人個人投資家「年7%は魅力だけど、やっぱ、やーめた。フランスも、サルコジ兄が、メルケルおばさまと仮面夫婦状態が相変わらず続いているし。表面上は共同声明で両国一丸となり、なんてぶち上げているけど。そもそも妻のほうが経済力は遥かに上なのに、夫のプライドだけは人一倍強い。
私の友人の日本人元証券マンは、3年間パリ駐在があったので、定年後の今、フランス政府から、毎月1000ユーロも生涯年金が振り込まれているそうだ。そういう大盤振る舞いをしてきたから、国中、既得権だらけ。果たして、どこまで経済構造改革を断行できるかね。フランス国債の格下げも当然でしょ。」
日本人機関投資家「ふーむ、そのうえ、ドイツ国債にも火事が延焼の可能性となると、やっぱり外債では米国債しかないでしょう。腐っても、鯛。米国経済の実態を見れば、とても安全資産とは言えないけど、とにかく流動性が豊富。我々、ビッグマネーを運用する立場では、なんといっても水が豊富な池に、安心感を感じるのだよね。安全性への逃避ではなく、流動性への逃避さ。リーマン・ショックの時に、水が枯渇した池の恐ろしさを、いやっというほど体験させられたからね。売りたくても、買い手がいない恐怖。くわばら、くわばら。それに、私ら所詮サラリーマンだから、皆が持っていれば、赤信号渡るのも怖くない。」
日本人個人投資家「こうしてみてくると、我がJGB(日本国債)もまんざら捨てたもんじゃないね。なんたって、自国個人投資家の金融資産1400兆円のプール内で、「鉄板」の国内長期保有。但し、いずれ国の借金が利払いで膨れ上がり、じり貧の個人金融資産残高を上回る日が来るは必定。温室育ちの日本国債が、欧米投機マネーの荒波に晒される。欧州E-U型ウイルスが、日本にも伝染するわけだ。冒険投資家ジム・ロジャーズさんも言ってたっけ。日本円買い持ちしているけど、5年後は総売りだって。執行猶予5年か・・・。」

2012年