豊島逸夫の手帖

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プラチナ急騰論争

2012年11月14日

11月14日は、フェイスブック株保有者の社員などインサイダーに課されるロック・アップ(売買禁止)の解禁日。既に8月16日と10月31日(ハリケーン休場で二日遅れとなった)、段階的に解禁されている。(従業員の在勤年数などで解禁日は異なる。)
そして、本日は発行済み株数27億株の中で8億株近くという最大の解禁日を迎えるのだ。

最近の同株価の動きをみると、10月23日の第3・四半期決算が予想を上回る32%増収となり、一時23ドル台まで持ち直した。 しかし、その後、売買解禁による売りがジワリと効いたこともあり、再び20ドル台を割り込み、13日は19.86ドル(前日比1.05%下げ)で引けている。
本日は、まさにFB社員の愛社精神が問われる日といえよう。
例えば、2010年入社社員は、一株当たり24.10ドルの計算で報酬の一部として自社株(株式オプションではなく、株式譲渡の形態)を支給されていたという。
低迷する自社株に見切りをつけ、あえて売却するか否か。それで居づらくなり退社する社員も出るのか。
8月26日も10月31日も当日の同株価は、それぞれ6%と3%ほど下げた。
今回は、対象となる株式数が多いだけに、本日のFB株は荒れそうな雲行きだ。デイトレーダーも日中活発に動くだろう。
ただ、これまで、解禁日待ちの売りが一巡すれば、株価は戻している。長期投資家たちは安値を拾っているわけだ。
ソロス氏も2012年4-6月期ではあるが、34万1千株を購入していることが、SEC(米国証券取引委員会)への情報開示で確認されている。

なお、今回の解禁対象株式には、ザッカーバーグCEO保有の6000万株も含まれている。しかし、同氏は9月4日のSECへの報告で、「少なくとも今後12か月間は保有自社株売却の意思なし」と述べている。(市場には、創業者CEOであれば5年や10年、あるいはそれ以上の期間、保有し続けると明言してほしかった、という声もあったが。)
同じSECへの報告では、二人のディレクターが「税金関連の理由」で保有株式の一部を売却するとも記された。納税に必要な現金ねん出と見られている。
そのうちの1人は別途声明を発表し「SECへ報告された以外に、保有株式を"1ペニーも"売る意思はない、"無期限"に保有するつもり」と述べている。

米国では「フェイスブック疲れ」という言葉が最近よく聞かれる。小さなスマートフォン画面でのFBのやりとりにも疲れ、ツイッター回帰現象さえ見られるほど。ツイッターにも飽きた人たちからは、「やっぱり生のリアル会話が一番」との声さえ出始めた。
そして、FB株主も、期待が高かった分、持ち疲れ気味。
戦略的に最も重要としているスマートフォンの小さな画面をいかにマネタイズ(収益をあげる)するか。未だ株主が納得できる答えは出ていない。しかし、計り知れぬ可能性も秘める。将来の夢を買うことには忍耐が必要だ。Buy and forget (買ったら忘れる)くらいの気持ちで臨むべきだろう。

さて、プラチナが20ドル以上急騰して、1580ドル台にまで戻してきた。香港のLBMA貴金属会議でジョンソン・マセー社が、2012年は南アフリカのストライキの影響で、プラチナが12.4トンの供給不足になると発表。昨年は13.3トンの供給過多であったから、180度転換。
しかし、筆者が疑問に思うのは、トムソンロイターGFMS社が、2012年プラチナ需給予測で、3.7トンの供給過多と主張していること。
ここからは業界の裏事情で、独立系の筆者くらいしか書けない話だが、ジョンソン・マセー社は、そもそも白金を主な営業品目とする会社ゆえ、ここの発行するレポートは業界寄り。要はポジショントークが多いことは業界内で暗黙の了解がある。以前、プラチナウィークで同社が発表した年間価格予測が発表当日には下限を割り込んでしまったというような例もある。
筆者のプラチナ相場観は確かに強気だが、需給統計的にはGFMS社のほうが、中立的と理解している。
それから南アフリカのストライキが、2013,2014年と1年も2年も続くはずもない。仮にストライキで生産量が減少しても、2012年一過性である。
それでも筆者がプラチナに強気なのは、やはりQE3による過剰流動性。特に市場規模が小さく、ボラティリティーが高いプラチナは投機筋に買いの標的として狙われやすいからだ。
過去5年間のレンジを見ても、800ドルから2200ドルまで、いくらをつけても不思議ではない相場なのだ。プラチナは。

2012年