豊島逸夫の手帖

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愛社精神問われるFB社員

2012年9月5日

4日NY市場の引け後(日本時間5日早朝)に、フェイスブックのSEC(米国証券取引委員会)への報告で、同社株最大の保有者ザッカーバーグCEOが「少なくとも今後12か月は保有FB株売却の意志なし」と述べていたことが判明。この報道後、時間外取引で同社株が反騰して18ドル台を回復している。といっても、依然、公開価格38ドルを約53%下回る水準に変わりはないが。
市場の受け止め方としては、「株主フレンドリーではないと言われた同CEOが初めて株主の方を向いた発言」と注目されたが、同時に、「創業者CEOであれば、5年や10、或いはそれ以上の期間、保有し続けると明言して欲しかった」との声も。
なお、SECへの報告には、二人のディレクターが「税金関連の理由」で保有株式の一部を売却するとも記された。納税に必要な現金捻出のためと見られる。
そのうちの一人は別途声明を発表し、「SECへ報告された以外に、保有株式を"1ペニーも"売る意志はない。"無期限"に保有するつもり」と述べている。
そこで注目されることが、社員がインサイダーと見做され、自社株売却を禁じられるロックアップ期間が切れる、この秋の動き。
20億株以上が、その対象となる。
解禁日は当初11月14日とされていたが、今回のSECへの報告で、10月29日に早まった。
例えば、2010年入社社員は、一株当たり24.10ドルの計算で報酬の一部として自社株を支給されていたという。(株式オプションではなく、株式譲渡の形態である。)
ここで問われるのが、社員の愛社精神。
下がり続ける自社株に見切りをつけ、敢えて売却するか否か。それで居づらくなり、退社する社員も出るか否か。
10月29日が視野に入り、ザッカーバーグCEO発言に対する社員の反応を市場はウオッチしている。

なお、米国では「フェイスブック疲れ」の言葉も聞かれる。フェイスブック株保有には忍耐が必要。そして小さなスマホ画面でフェイスブックのやりとりにも疲れ、ツイッター回帰現象も見られる。ツイッターにも飽きた人たちからは「やっぱり生の会話が一番」との声も出始めたという。

さて、労働者の日(今年は9月3日)の連休が明けると、ニューヨーク市場も一気に秋相場入りだ。
早速、VIX(市場の恐怖指数)は、18台にまでジリ高。金価格は、一時3月13日以来の1700ドル大台を回復。
ニューヨーク株式市場では「厄月」とされる9月ゆえ、ただでさえ市場は神経質になっている。
そこに、ゴールドマン・サックスの株式ストラテジストによる、「9月に売りの波あり。9月14日までにヘッジすべし」とのコメントが市場に流れた。
更に、債券王の異名を持つビル・グロス氏(ピムコ)の、ツイッターでの呟きが話題に。
曰く、「ドラギは欧州周辺国に2~3年の小切手を切るつもりだ。これはかなりのリフレ政策。金、TIPS(物価スライド国債)、実物資産を買え。」(英文本文は@PIMCOで見ることが出来る。)
市場は「嵐の前の静けさ」から「嵐の予兆顕在化現象」へ移行中である。

2012年