豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. あれはいったい何だったのか
Page1181

あれはいったい何だったのか

2012年4月16日

今、欧米市場関係者が首を捻っていること。
それが本欄4月11日に詳述した、欧州債務危機再燃で金がリスク資産として「売られず」、「安全性への逃避」で買われたことだ。昨年終盤から、金の欧州債務危機への反応としてはほぼ一貫して売られてきた。教科書通りに動けば、経済危機には買われるはずだ。しかし、教科書通りには動かなかった。
それが先週、あの日に限って、突如、教科書通りの動きをしたわけだ。
これは一過性の現象なのか。或いは、金の動きが教科書通りに戻ったのか。欧米市場関係者(そして筆者も)は計りかねて首を捻っているところだ。最近はドル高でも金高とか、金・プラチナ価格逆転現象とか、従来の市況の法則から外れる局面が頻発している。
とりあえず今週の動きを見てみたい。
(なお短期的な動きは別にして、長期的には欧州債務危機は金にとってやはり買い材料だと確信している。)

その、欧州債務危機だが、今日の日経一面記事「独仏ギリシャ選挙 与党苦戦 欧州の選択 危機を左右不安再燃の火種残す」に書かれているが、ようやく筆者の論じてきた4月危機説がまともに論じられてきた様子。

今の金相場は、バーナンキの一言と欧州選挙の行方、そして中国経済減速の3つの勘所を押さえておく必要がある。

なお、インドの金課税強化の動きについてだが、業界の反対ストライキに配慮して、政府側が妥協の姿勢を見せ、一旦、終息に向かうかと思われたが、5月初めに再び宝飾業者ストライキの話も出ている。まだ、決着はついていない。5月はインドの祭礼シーズンで小売店にとっては稼ぎ時なので、金消費量への影響が注目される。

金・プラチナ値差に関しては、またここにきて逆ザヤが70ドルにまで拡大中。(金1650ドル、プラチナ1570ドル)今回の逆転現象は投機マネーの悪戯ではなく、構造的要因に根差すので長期化の様相だ。

最後に恒例のトムソンロイターGFMS社のゴールドサーベイ最新版が発行された。まぁ、ウダウダと書いているが(笑)、結局、2000ドルが今年後半から来年初めにかけて到達されようとの見解であった。

2012年