豊島逸夫の手帖

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FOMC声明の英文解釈講座

2012年8月23日

7月31日-8月1日に開催されたFOMCの議事録が昨晩公開された。
そこで最も注目された部分がこれだ。
Many members judged that additional monetary accommodation would likely be warranted fairly soon unless incoming information pointed to a substantial and sustainable strengthening in the pace of the economic recovery.

追加的金融緩和(additional monetary accommodation)が かなり近い時期に(fairly soon)に実施されることが正当化される可能性が高い(likely be warranted)と多くのメンバーが(many members)判断した(judged)。但し、条件付き。その条件とは、今後発表される経済データが、大幅(substantial)且つ長期維持可能な(sustainable)ほどの経済回復ペース(pace of economic recovery)を示すことが無い限り(unless)、と表現されている。

さて、ここで市場が注目した単語が、まずmany members judged (多くのメンバーが判断した)ということ。
そして、追加的金融緩和(所謂QE3を含むと見られる)の実施時期がfairly soon(かなり近い時期)と表現されたこと。
更に、経済データが大幅且つ持続的な経済回復を示さない限り、という条件付きの表現。これは、経済が本当に良くなった証拠がない限り、追加的金融緩和を実施しますよ、と解釈される。「悪くなったらQE3」から「本当に良くならないとQE3」にニュアンスが変わったのだ。この差は大きい。
なお、このFOMC後8月に入り、米国経済データは小売関連を始め良い数字が出ているので、これが、但し書きの「本当に良くなった」に相当するのではないか、との解釈も成り立つ。しかし、この点に関しては、なんといっても次の米国雇用統計を待たねばならぬ。

もう一つ、議事録の後半で注目された一節がこれ。
Many members expressed support for extending the Committee's forward guidance, but they decided to defer a decision on this matter until the September meeting.

多くのメンバーが、(2014年末まで失業率は高く、インフレ率は目標とする2%以下にとどまる)という先行き見通し(forward guidance)の2014年末という時期を延長する(extend)することを支持した。但し、最終決定は9月のFOMCに持ち越す、ということだ。
これは、出口戦略が発動され利上げなど金融引き締めに転換する時期が2014年末から例えば2015年に延長される可能性を示唆している。
この利上げに転じるときこそ、金価格が下落傾向に転じるタイミングと予想されるので、金市場では「執行猶予が延びた」と歓迎された一節だ。
なお、金価格は、このFOMC議事録発表後、時間外取引だが、1630ドル台から1650ドル台まで急騰した。総じて、9月のQE3実施を織り込みつつある。且つ、金価格上昇トレンドの長期化に関して自信を深めている。要は2015年までは金高騰が続く、と読んだわけだ。

さて、明日から中国出張。上海で中国人投資家300名集まる貴金属セミナーで講演。日本人はもうひとり、良き後輩の池水雄一。
尖閣に揺れる日中関係なれど、マネーの世界に領土問題はない。ボーダレスだ。
今日は9月7日発売の日経金ムック本の校了日。ここ数日、徹夜に近い状態が続いている。データのチェックとか校正作業はホントに時間かかるし、座りっぱなしでしんどい。(・・;)

2012年