2012年2月20日
筆者は二年前からイソップ物語のアリとキリギリスに例えているのだが、ドイツはアリ組、ギリシャはキリギリス組。
キリギリス組の政府が追加歳出削減を閣議決定、議会通過させても、これまで本欄のギリシャ・レポートに綴ってきたように、キリギリスの気質は変わらない。
しかしアリ組のボス、メルケル首相はキリギリスにアリになれと迫る。アリ組に転向しなければ、施しは与えられない、というわけだ。
とはいえ、アリ組だって、キリギリス組が色々おカネ使ってくれたから域内輸出増加の恩恵に預かれたわけだ。ユーロ導入のメリットを最も多く享受した国がドイツである。
だから、同じドイツでも、現地に行くと、経済の都、フランクフルトと政治の都、ベルリンでは「民意」に明確な温度差がある。
フランクフルトではユーロ導入の恩恵を最も強く感じているから、ギリシャ救済止む無しの論調が目立つ。キリギリス組あってこそのアリ組の輸出主導型経済モデルである。
他方、ベルリンでは、浪費家キリギリスを堅実派アリが何故救済せねばならぬのか。納得できないし、モラルハザードを警戒する論調が圧倒的に強い。
そこでアリ組のボスは悩む。
キリギリスがアリになれないのは分かっている。でも(PIIGSという)キリギリス組を死なせるわけにもゆかない。生かさず殺さずの塩梅が難しい。
年金2割カット、最低賃金2割カット、追加的歳出削減、脱税摘発強化などをキリギリス政府が決めても、月500ユーロ(約5万円)でキリギリス国民が生活出来ないことは明白だ。特権階級の税逃れ志向は殆ど「既得権益」の域に達しており、これも容易にメスが入らぬ。救済案実施の条件を飲んでも、まず遵守は期待できまい。メルケル首相もそこまで読んでいる。
その上で、とりあえず、書面だけでも署名してもらって、日本風に言えば手打ちの「しゃんしゃん」で当座のデフォルト危機を切り抜け、問題の実質的先送りを図ろうというのが本音ではなかろうか。これが、筆者が現地で感じた結論である。
マーケットには「手打ち」で安堵感が流れリスク・オンになっても、リスクマネーの逃げ足は速い。一方、「手打ち」にならずば、忽ちリスク・オフになる。
要は、株も商品もマーケット全体として、構造的不安要因を抱えるギリシャ危機の伝染を防ぐ政策対応である世界的金融緩和モードが市場を主導する。それに対し、短期的にはギリシャ発のリスク・センチメントがオン・オフで上下に振れる、という構図が今年は続くと筆者は見ている。今回はその2012年第一幕であろう。
さーて、二回目のアテネ訪問ということで、昨日は今売り出し中の羽田深夜発フランクフルト便にチェックイン寸前に、フランクフルト空港職員ストライキで欧州域内便欠航続出の知らせ。(先週から始まっていたのは筆者も認識していたので覚悟はしていたが。)アテネ行きの便も見通しつかずとのこと。実は筆者にはヒースロー空港で72時間も足止めくらった苦い経験があるので、その場で即出発延期決定。代替ルートとして中国系航空会社の成田―北京―アテネ線とか、トルコ航空のイスタンブール経由アテネとか、エミレーツ空港のドバイ経由アテネ行きとか、欧州をバイパスして南廻りでのアテネ行きを急遽模索中。仮にアテネに辿り着いてもそこでは48時間ゼネストという警告も流れている。いやはや、ストライキという障害物相手の競争みたいな様相になってきた。路上でのデモ隊との衝突などは、ほんの一部のことゆえ心配していないのだが、フランクフルトのような欧州域内ハブ空港で着陸機を駐機場まで引っ張る車両の運転手さんたちにストライキやられるとエーゲ航空やオリンピック航空などは忽ち機材のやりくりに窮するのだろうね。こちとら乗客も手も足も出ない。延期となった瞬間にむしょうに腹が張り、羽田国際線ターミナル名物江戸小路できつねうどん食べて荷物かかえ帰宅した。タクシーの運転手さん「お客さん、どちらからお帰り?」「Σ( ̄□ ̄) !」
貴重な「担保物件」アクロポリス神殿を現在修復中。(筆者撮影)