豊島逸夫の手帖

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日経ムック「不安を生き抜く!金読本」今日発売

2012年9月10日

今回は、斬新な金の本が出来たと自負してます。
ジムロジャーズ対談もすっかり親しくなった今回は、奥さんと二人の娘さん同席の対談。カリスマ・ファンド・マネージャが金を買う理由は、娘たちの将来を考えての超長期スパンだった。
そもそも編集者全員女性。そのプラットフォームで筆者が書き語る趣向。
「家族で読める金読本」。女子も男子も、シニアからジュニアまでそれぞれの世代に対応した作りです。
個人的には、カラー写真をふんだんに盛り込んだ欧州中国現地ルポと「結婚するならジャスダック銘柄」アラサー女子対談が一押しかな。新大久保イケメン通りハンドマッサージ店を訪問したときのコリアン・ボーイの一言。アジア経済危機でIMF管理下に置かれたとき、「うちのおかずが減った」も印象的。
まずは、手に取って見てほしい。
まぁ、ブログ読者諸氏は、豊島に付き合って感覚で、本屋さんへGO!!(笑)なお、丸善東京駅前オアゾ店での出版記念講演会(9月26日開催)の入場券は同店購買者限定だそうです。

さて、マーケット動向。
7日発表された米国雇用統計悪化に対する市場の反応は、株高、ドル安、ユーロ高、円高、債券高、商品高。
金も雇用統計発表直前までは、雇用統計改善予測がまさり、1700ドルを再び割り込んでいた。しかし、発表直後から1730ドルまで一気に買われ、一時は1740ドル台突破の場面も見られた。
株は、米国景況感悪化の悪材料が金融緩和期待の好材料を若干相殺するが、金はQE3によるドル価値希薄化に対する「ドル不信任票」を一気に吸収するので、上げ幅も大きくなる。
しかも、ジャクソンホールでのバーナンキ氏講演、ECB南欧国債買い取り、そして米国雇用統計悪化の三つのイベント結果がいずれも買い材料となる「三段跳び」の急騰だ。
さて、問題は、これだけ「期待感」で買われた相場の落としどころ。
多くの投機家が、QE3ありとの「噂」で買った後の「出口戦略」である。
いつ利益確定の売りに出るのか。
「相場の常識」から言えば、「噂で買って、ニュースで売る」。
しかし、12~13日開催のFOMCで仮に追加緩和示唆或いは決定なくても、市場は「切り札温存」と解釈するのではないか。依然「期待感」は残ると思う。
そこで、次回のFOMCまで買いポジションをキャリーできる(持ち続けられる)投資家はじっくり買い持ち。その前に結果を出さねばならぬプロのトレーダーは売り手仕舞いに出ざるを得なくなろう。
総じて、株も商品もニュースで売られる、或いは、失望感から売られる局面があっても、底は浅いと思う。
市場に沈殿している過剰流動性のマグマは徐々にせり上がっている状況である。そのマグマが大噴火すればバブル相場となるが、小規模噴火を繰り返し徐々に相場エネルギーが発散されて行く過程では、乱高下を繰り返しつつ徐々に底値を切り上げてゆく相場となる。
なお、米ドルは、金融緩和が売りの材料となる稀有の投機対象である。外為市場では、ドルの売りエネルギーが、どの通貨の買いエネルギーになるか、が焦点。受け皿となり得る各通貨の市場規模、および規制の有無から言ってユーロと円が主たる選択肢とならざるを得まい。足元ではユーロ円のクロスレートは100円台を回復してユーロ高、円安に反発している。しかし、12日に、ドイツ憲法裁判所のESM合憲違憲判決と、オランダ下院選挙という不確率性の高いイベントが控えるユーロに比べれば、政局混迷でも円のほうが少なくとも週前半は相対的買い安心感が再び滲み出そう。

2012年