2012年11月21日
20日の金小売国内価格は1グラム4788円と約9カ月ぶりの高値をつけた。ドル建ての国際金価格はリスク回避モードの中でやや頭が重い展開ゆえ、この国内金価格上昇は主として「安倍円安」がもたらした現象である。
そこで一般個人投資家は「売却」に走る傾向にあるが、筆者の知り合いの元経済官僚たちは「購入」を増やしている。
「国債の日銀買い入れ」「無制限通貨供給」という安倍発言に「円の通貨価値堕落」の兆しを感じているわけだ。
ひらたくいえば、1000兆円規模の国の債務の「帳簿を見てきた」人たち。円の通貨供給に実務的に携わってきた人たち。
中には、筆者の著書の読者(地方公務員)が、実名入りで「返済する目途が全くない地方債発行に従事している」と手紙をよこしたりする。
正直、筆者の背筋がひんやりする瞬間だ。
庶民の生活実感、そしてエコノミストの分析では、デフレの日本にインフレ懸念など実感が薄い。
しかし、情報の中枢にいた円という通貨の元番人たちは「もし安倍連立政権になったら、自分の退職金を円では持ちたくない」と淡々と語る。
その「淡々さ」が不気味だ。
ところ変わって米国。
元FRB議長グリーンスパン氏が、あるヘッジファンドのフォーラムで講演したとき、主催者側に「どの通貨で講演料を振り込めばよいか」と聞かれたとき、淡々と「ゴールド」と答えたという。米国CNBCの看板キャスター、マリア・バルティロモ女史が番組内で披露した実話である。
在任中から同氏は、90年代に欧州の主要中央銀行が大量の金売却に走ったとき、上院銀行委員会に呼ばれ「米国は金を売らないのか」と聞かれ、「NO。金は究極の通貨だからだ」と答えていた。
18年間ドルの番人たるFRB議長を勤め、情報の中枢に身を置き、米国経済の裏表を知り尽くした人物が、引退後の講演の謝金にドルの代替通貨たる金を所望するというエピソード。「金選好」は「ドルへの不信任投票」ともいえる。
さて、安倍氏、白川氏の「金選好度」は?
本音を聞いてみたいものだ。
さて、今日発売の日経マネーには別冊付録で最新金小冊子がついているよ。為替、株の専門家との対談、貴金属調査会社GFMS社CEOとの対談、そして良き後輩亀井幸一郎と池水雄一との対談など盛り沢山。本誌内の月刊連載コラム「豊島逸夫の国際経済深層真理」にも引き続き書いてます。
それから、今朝の日経朝刊14面にインタビュー記事が出ています。
今晩から中東出張に出ます。ホルムズ海峡の写真でも送れるかな。インフラがアテにならないからブログ更新も不規則な時間になるでしょう。