豊島逸夫の手帖

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ギリシャに見る中国・ロシアの影

2012年6月5日

アテネで市民と直接対話すると、まず中国人かと問われる。筆者が日本人と分かると警戒心を解く。
「中国は我が国の港を買っているのよ。」との一言がキッカケで調べてみると、中国の国営海運会社コスコ(中国遠洋運輸公司)がアテネ首都圏の外港都市ピレウスのコンテナ港運権益を35年契約、34億ユーロの対価で購入している。更に、ピレウス港近郊の陸運への積み替え施設と梱包センターも既に買収。ピレウス港湾運営会社の株式23%取得の意向も示している。クレタ島の港にも食指を動かし、ギリシャ第二の都市テッサロニキでは、コンテナ・ターミナル入札に参加したところで市民の反対運動に遭っているという。
加えて、中国資本は、アテネ国際空港の20年契約の権益(2026-2046年)に関して5億ユーロの対価でギリシャ政府と獲得交渉を進めている。
アジアから見れば「欧州の入り口」ともいえるギリシャのインフラを「どさくさに紛れ買い占めている(某市民の言葉)」と見られるので、中国人への警戒感も強まるわけだ。
当の中国側は、昨年温家宝首相のギリシャ訪問の際には「困難な状況にある良き友人を助けに来ました」と述べたが、現地の新聞の見出しは「中国来襲」と書きたてた。
実は、リスボンを訪問したときも、中国人と間違われ警戒された。ポルトガル政府が、中国の国有電力配送会社の国家電網公司とオマーン・オイルに、電力会社RENを5億9200万ユーロで売却合意していたのだ。
ポルトガルはユーラシア大陸最西端のロカ岬に象徴される如く、地政学的に欧州とアメリカ大陸・北アフリカを結ぶ地政学的に重要な拠点にある。政府に長期戦略があれば、リスボン空港を一大ハブ空港に出来たであろうに、とも感じたが、中国は既にしたたかに動いていたのだ。
そもそも、ギリシャもポルトガルもEU・IMFからの救済の条件として「民営化」を進めているが、その実態は「おいしい案件」にのみ買い手がつくという状況だ。
そして、ロシア。
ギリシャはギリシャ正教、ロシアはロシア正教と宗教的に「身内」関係にあるが、二国に挟まれたトルコとは犬猿の仲が続く。
また、キプロス島は、ギリシャ系とトルコ系に南北分断されているが、国際的に承認されているギリシャ系のキプロス共和国は、ロシアと欧州の投資マネーの主要な租税回避地となっており、住民の1割はロシア人と言われるほど。
そのキプロス沖に原油・天然ガスの存在が確認され、ロシア第二の天然ガス生産会社ノバテクが入札参加に動いている。
この海域を巡っては、既に、ギリシャ・キプロス共和国・イスラエルが排他的経済地域を宣言しており、トルコが反発している。
このような状況下で、仮にギリシャがユーロを離脱すれば、ロシアとイスラエルに接近する可能性が十分に考えられる。
現地アテネで感じることは、NATOとしてもドイツとしても、おいそれとギリシャを切れないという現実であった。

なお、足元の金価格は1620ドル台を維持。急反騰の反動で下げるかと思ったが、さほど下がらず。金プラチナの逆転値差は一時200ドル近くにまで拡大。さすがに200ドルにまで接近すると、拡大しすぎの感もあり。されど需給構造に根差す現象ゆえ、根は深い。

昨日は週刊文春の対談。
週刊文春とか週刊現代に出番が増えたのは、読者がエレベーター式に年を重ね、必然的に「資産運用系」記事が増えてきたから。週刊朝日然り。

今週末土曜日は北九州でセミナー開催。↓
http://www.mmc.co.jp/gold/event/010038/index.html#spot02 (現在公開されていません)

(セミナーのお申込受付は終了いたしました。)
小倉の楽しみは「天すし」!玄界灘の海の幸をふんだんに使った創作寿司なのだけど、へんに凝った創作系ではなく、実にセンスが良い。6人で満席の店で、「寿司は食するもの」との考えを貫き、酒は一切出さない。ひたすら食べまくるのだ。酒飲まない身には大歓迎の店。
そして「揚子江」のジャンボ肉まん。小倉出身の友人から聞いて知った。これを新幹線内でぱくつくのだ。
当日の夜は、学生向けの講演あり。こういうセミナーは個人的に好き。
翌日は司馬遼太郎の本などで読んで、なんとなく興味ある平戸のほうに廻ろうかと画策していたが、アテネ、中国と出張予定が並んでしまい、スケジュール押し押しで断念した。壱岐にも行きたいのだけど~。

2012年