豊島逸夫の手帖

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トウモロコシが急騰すると離婚が増加

2012年7月6日

今週の全米女子オープンでは宮里藍ちゃん熱波と戦いつつ、上位で健闘中(ガンバレ!!)。その熱波と少雨がコーン・ベルトも襲い、トウモロコシ価格が急騰中だ。
特にトウモロコシはこれから10日間が受粉の大切な時期。トウモロコシのヒゲひとつが受粉して穀粒が一個できる。そのヒゲがトウモロコシの芯から出てくるには降雨が必要なのだ。更に、受粉後も、穀粒内部に水が必要だ。降雨量で、トウモロコシの穀粒のカタチや質が決まる。
コーン・ベルトからのレポートでは、今の時期に、トウモロコシの生育状況が、高さ2メートルから2.7メートル程度で普通なのだが、現状は、90センチから1.8メートル程度とのこと。
ここ10日間に雨が降ることをトウモロコシ農家は祈るばかりだ。
実は、今年は豊作が予想されていただけに、彼らのショックは大きい。
ショックが大きければ、投機筋も動き、価格上昇は増幅する。
然し、雨が降った途端に、状況は一転するだろう。

トウモロコシ価格が上がると、思わぬ現象も生じる。
餌用トウモロコシ価格も上昇するので、家畜生産者はと殺を急ぐ。「家畜という資産の流動化」現象とでもいえようか。その結果、牛の現物供給は増え今年の価格は下がるが、先物は品薄となり価格が上がる。来年は牛肉価格が上がるかもしれない。筆者もスイス銀行時代にカーギルという大手穀物会社に研修派遣されたことがあるが、シカゴの商品先物投機家は、このような思惑で動くのだ。

そして、トウモロコシ価格急騰は、シカゴ郊外の農業地帯の離婚件数も増加させる傾向がある。御多分にもれず、本音は離婚したい仮面夫婦が多いわけだが、失業中ゆえ慰謝料も払えぬ。マイホームの住宅ローン金額が、その住宅の評価額を上回ってしまった所謂アンダーウオーターの状態に陥るケースも多く、処分もままならぬ。結局は仮面夫婦状態を続けざるを得ない例が続出しているわけだ。ところが、トウモロコシ価格が急騰すると農地価格も連れ高になる。そこで、待ってましたとばかりに、住宅地を農地に転用したうえで、離婚専門の弁護士に駆け込むらしい。風が吹けば桶屋が儲かるが、干天では弁護士が儲かるのか。
このエピソードは、米国の不動産市場の実態と、資源問題そして中産階級危機という社会現象の各面に亘る現象で、根は深い。

2012年