2012年2月15日
日本時間今朝、発表されたSEC登録ファンドの運用資産開示情報(通称13F)によると、大手ヘッジファンドのポールソン&カンパニーは2011年10-12月期に金ETFを約10トン売却していた。
(各ファンドは四半期ごとの期末運用資産残高を銘柄別に期末後45日以内にSECに報告している。2011年12月31日時点での残高が現地時間2012年2月15日直前にSECのサイト上で公表されたわけだ。)
ポールソンは約97トンという一ヘッジファンドとしては突出して大量の金ETFを購入保有し続けていたが、昨年7-9月期に約34トンの金を売却していたことが判明。その時期に金価格が1900ドル台の史上最高値から1500ドル台まで急落していたことから、その後の売却動向が市場では注目されていた。(年間生産量が2800トンほど市場で一ファンドが100トン近い金を保有することは影響が大きい。)
今回も昨年12月に金価格が1500ドル台まで急落しており、「状況証拠による推測」の域を出ないが、同ファンドの金売却の影響が市場の話題になりそうだ。
なお、足元の金価格は昨日夕刊マーケット総合面の「先読みEYE」欄で筆者が述べたように、FRBの超金融緩和政策2014年終盤まで継続という材料が効いており、長期上昇トレンドが続いている。短期的にはギリシャ問題によりリスク・オンとリスク・オフの状況が交互に示現するなかで1700ドル台前半のレンジで売り、買いが繰り返されている。
日本時間今朝7時時点での国際金価格は前日比2ドル高の1721ドルで推移しているが、オーバーナイトで円安が急速に進行したので、今日の東京市場の円建て金価格は為替要因により上昇しそうだ。
ポールソン金売却継続の材料は直ちに売り材料とはならないが、ジワリ投資家心理に影響を与える可能性はある。
なお、ヘッジファンドのポールソンはバンク・オブ・アメリカ株や中国森林株の保有で株式ポートフォリオが大幅に毀損し、2011年は40%以上のマイナス・リターンという「17年間のファンド生活で最悪の年」と本人も認める惨状。彼自身が顧客向けレターで「欧州債務危機がここまで悪化することを読み切れなかった」と謝罪しているほどであった。
サブプライム危機を予見し、いち早く金融株や住宅関連債券を空売りして他のヘッジファンドが軒並み30%以上のマイナス・リターンを計上した年に独り30%以上のプラス・リターンを叩き出し、一躍「サブプライムに勝ったファンド」として持て囃され、今やソロスを凌ぐほどのカリスマ性を持つポールソン。日本の機関投資家の間でも同ファンドを保有している例が多い。しかし、さしものカリスマ・ファンドも欧州債務危機には勝てなかったようだ。保有金ETFだけが今や虎の子資産となりつつある。購入時期から判断すると購入価格は900ドル前後である。
ポールソン&カンパニーの金ETF(スパイダー・ゴールド・シェア)の保有残高推移
2011年6月30日 31,500,000株 (45億9903万ドル、重量換算 97.97トン)
2011年9月30日 20,273,540株 (32億443万ドル、63.05トン)
2011年12月31日 17,310,952株 (26億3109万ドル、53.84トン)