豊島逸夫の手帖

Page1285 4インチ画面上の「仁義なき戦い」

2012年10月23日

7月にグーグルから引き抜かれたヤフー新CEOのマリサ・メイヤー女史。いきなり妊娠を公表して9月に出産。そして23日 日本時間早朝、ヤフー第三・四半期決算発表に初のお目見え。
正直、週刊誌的好奇心も手伝い、肉声を聞いた。
英語に、若い米国人女性特有の「語尾上げ」が残る。普通のCEO記者会見に比し、若干素人っぽいともいえるが、37歳の若さへの期待感も誘う。特に老舗としての地位は確保しつつも、インターネット業界の中では企業成熟化の兆しも漂うヤフーに、新風を吹き込む推進力となりうる潜在性は伝わってくる。
そういえば、フェイスブックCEOザッカーバーグ氏の上場後初の決算発表時にも「らしからぬ」語調を感じたものだ。(なお、24日には第三・四半期決算発表、FBの番である。)

さて、注目のメイヤーCEO発言内容だが、ヤフーの企業戦略優先順位トップに「携帯端末画面の活用」を挙げた。
今や、フェイスブックもグーグルもヤフーも、スマホの小さな画面上から広告を通じ如何に利益を創出するかという「マネタイズ競争」に突入している。その勝負のカギとなるのが、潤沢な保有現金や短期証券(ヤフーの場合は20億ドルほど)を投じての企業買収だ。対象企業セクターは当然ニッチな分野に絞られる。例えば、レストラン予約サイトのオープン・テーブルなどの名前が噂されている。

そこでメイヤーCEOが持つ比較優位性といえば、シリコンバレー各社に散らばるグーグル出身者たちとの人的ネットワークであろう。
旧グーグル出身者グループの中では一目おかれる存在とも言われる。
既に就任後間髪入れず、その人的プールから高額パッケージでCOOや企業買収最高責任者など幹部を次々にリクルートしてきた。
特に、新CEOは商品・技術開発分野に熱心で、営業部隊への目配りが相対的に薄いと言われる。メイヤー氏就任発表直前に雇用されたセールス部門トップが、早くも辞任したことが示唆的だ。
また、同社でアグレシッブにアジア戦略を仕切ってきたCFOの辞任に、ヤフー・ジャパンを含めアジア戦略の優先順位低下が透けて見える。

デスクトップ画面上での広告展開競争に遅れをとったヤフーにしてみれば、競合各社も「新規参入段階」で同じ出発点に立つ携帯端末画面上のマネタイズ合戦は、失地回復のまたとない機会でもある。
今回の記者会見で具体的言及が出来る段階ではないが、新CEOのマーケティング・センスも含めまさに真価が問われるところだ。
ユーザーの立場から見れば、狭い携帯端末上の広告は「目障り」なもの。
そこに、いかにユーザー目線での「現在地関連情報」などの提供や、サービスのブランディングによる差別化を確立できるか。まずはお手並み拝見。
市場は事前予測を上回る業績を好感し、ヤフー株価も時間外取引で上げている。

さて、急に話題が変わり(笑)、金価格だが、一時1710ドル台まで急落した後、1720ドル台で推移している。
筆者の相場観は今週号ヴェリタス「相場を読む」、そして今朝の日経朝刊マーケット面「金、投機資金が流出」の記事に引用されている。
QEという材料が陳腐化して(毎日QE3で買いというわけにもゆくまい)、次の新高値更新の山と見られる「米国の財政の崖」問題の顕在化は米大統領選挙後となろう。その間の端境期というか、手がかり難のなかで、ロング(投機家の買い持ちポジション)が売り手仕舞われた。スペイン発のリスクオフや中国経済減速が当面の材料視されている。
しかし、1600ドル台になれば、新興国からの買いが再び加速して相場を支える構造に変わりはない。

なお、今週発売の日経マネー最新号では、27ページに「公開、プロの稼ぎ技」特集で、「大きすぎてつぶせないスペイン国債は買い」の記事。
100ページには、オアゾ丸善での新著出版記念講演会の報道記事。
さらに110ページには、月例コラム「豊島逸夫の世界経済の深層真理」。今回は「金投資、今からでも遅くないですか」。
などなど、いろいろ出ています。

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