豊島逸夫の手帖

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安倍発言でドルが最強通貨に

2012年11月19日

相変わらず、日本はドル円中心に外為の動きを見るので「安倍円安」と言われる。
しかし、今、世界の通貨市場内ではユーロの売りエネルギーが最も強く、その売りエネルギーを吸収する受け皿として通貨としてドルと円が選択されている。
米国大統領選挙の週には、その受け皿としてドルより円の選好度が相対的に高く、円が三極通貨の中で最強通貨になった。筆者流の外為不等式では円>ドル>ユーロでなった。「財政の崖」が不安視されるドルより、円のほうがマシという判断であった。
しかし、安倍発言で円の「通貨の堕落」が連想され、一挙にドル>ユーロ>円と円が1位から3位へ最弱通貨に転落した。特に安倍氏の国債買い取りについての「無制限」という単語が効いた。
バーナンキFRB議長は「米国経済持続的回復が確認されるまで無期限QE∞」。ドラギECB(欧州中央銀行)総裁は「南欧国債を無制限で買い取る用意あり」。
この最新のキーワードを使った安倍発言により市場のスイッチが入ってしまった。「円よ、おまえもか」という反応である。
しかし、今、主にシカゴ通貨先物市場で円売り攻勢をかけているファンドの動きには、未だ極めて流動的なシナリオを囃し「噂で売って、ニュースで買う」手口が透けて見る。「安倍円安」の継続期間は、せいぜい選挙前の噂の段階までであろう。
12月に入れば、いよいよ財政の崖も瀬戸際。ユーロ売りエネルギーを吸収する通貨もドルから再び円にシフトしそうだ。
安倍発言は、外為市場に、不確定要素に基づく円の異常な下げ、というmisprice(ミスプライス=市場の本流から乖離した値動き)現象を産んだ。こういうミスプライス現象はいずれ是正されると読み、先行して動くのがヘッジファンドの得意技だ。
仮に安倍連立政権になっても、「無制限国債買い取り」「マイナス金利」「日銀法改正」実現へのハードルは極めて高い。
短期的には、この降ってわいたような円安はせいぜい選挙前までと見る。長期的には、基礎的円高圧力も依然強く残る。但し、安倍発言が日本国債への不安感を刺激して、円長期金利上昇を招くようなシナリオには注意したい。
それから、安倍円安がもたらした株高は、市場がくれた冬季臨時ボーナス程度として、市場の気が変わらないうちに有難く頂くことにしよう。

なお、先週は唐突な円安で、久し振りに欧米外為市場で「東京」の存在感が強まった。筆者のところにも欧米の市場関係者から「どうなっているのだ?」いう問い合わせメールが連日飛び込んだ。皮肉にも、円の動きで世界は日本の解散総選挙を知ることになったのだ。
ロンドンの某トレーダーの一言がきつかった。「今の日本を見ていると、沈みゆくタイタニック号の中で、『船長の責任だ、船長を変えろ』と乗客が騒いでいるように見える。」

さて、今週は中東出張へ。
おりから、中東情勢がきな臭くなっているので、現地に空気を吸ってきたい。
週末には帰国して、翌日の月曜日(26日)には日経CNBCの番組に夕方5時から生出演。
その後、夜9時からニコニコ生放送と日経CNBCの共催番組にニコニコ生放送で出ます。藤巻健史さんたちと生出演。↓
http://live.nicovideo.jp/watch/lv114267123?ref=ser&zroute=search&keyword=NIK

一昨日土曜日、テレビ東京の番組に生出演して、総選挙と経済みたいなテーマで元金融庁長官五味廣文さんと一緒に喋ったときのこと。
控室で世代間所得格差の是正、所得再配分の問題になったのだけど、そこで彼が「孫の教育費への贈与税軽減案」を語っていて、なるほどと思った。
金持ちのリタイア世代から、氷河期の若者への所得再配分にはひとつのアイデア。とにかく、1500兆円の個人金融資産の多くが死に金になっている。おカネにはきっちり働いてもらわないと困る。おカネこそ日本が持つ資源なのだから。

それから、先週金曜日には12月2日開催のゴールド・フェスティバル出演の大橋ひろこさんと日経CNBCキャスター江連裕子さんと打ち合わせ。
参加者の35%が女性とか。だから、とっつきやすいイメージでね。

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2012年