2012年6月27日
欧州の格付け会社エガン・ジョーンズがドイツをAA- からA+に格下げと発表した。大手S&PとフィッチはAAA, ムーディーズはAaaのトリプルA格を維持しているので、マーケットは大きく反応していない。
しかし、中長期的には南欧救済のコストがドイツ経済にボディーブローの如く効いていることは間違いない。
メルケル首相も危機感を募らせ、「私の生きている限り、債務の共有化はない!」と発言したことが報道されている。明らかに、苛立ちを募らせるドイツ納税者(=選挙民)を意識しての発言だろう。
しかし、ドイツ国内の世論にも温度差がある。政治の都ベルリンは「ギリシャ許すまじ」の強硬論が渦巻くが、経済の都フランクフルトはユーロの恩恵を最も強く感じてきただけに、「南欧救済止む無し」との論陣も目立つ。
政治の経済の板挟みで、メルケル首相も苦渋の瀬戸際政策を採らざるを得ない。国内向け強硬論を唱えつつ、対ギリシャ救済に関しては、3月の第二次救済合意に当たってもギリギリの妥協案を飲んだ。今回の再選挙後では、その救済妥協案に対して更に「再交渉」の余地ありと仄めかしている。
しかし、ドイツが少しでも軟化の姿勢を見せれば、同国の負担コスト増を招き、トリプルA維持は益々困難な状況になる。
更に、ドイツ主導の救済なのだが、メルケル首相の言動次第では、欧州諸国内で歴史的にドイツ支配の連想を呼ぶことも事実。
メルケル首相の選択の余地は限られている。
今日は、パリでフランスのオランド新大統領との首脳会談に臨む。新たな「仮面夫婦関係」を固めねばならぬ。サルコジ前大統領より「性格の不一致」が懸念される新たなパートナーと、どこまで「枢軸関係」を構築できるかが問われる。
夫婦関係では、経済力において夫より妻が勝る場合、妻の気配りが難しい。特に、夫のプライドが高いと尚更である。本当の夫婦関係であれば、自然な形で愛情が妻にやさしく寛容な振る舞いをさせる。しかし、愛がなければ、家計のツケを結局自ら背負う羽目になる妻の不満が徐々に鬱積するばかりだ。
しかも、夫婦ともに実家には口うるさい親戚筋や知人たちが控える。メルケル家では、嫁の勝手な大盤振る舞いを特に嫌う。ドイツ国会は、新たな南欧諸国の救済案について個別に事前の議会承認を求めている。
このような複雑な家庭事情を抱えつつも、大人の関係ゆえ、にこやかに共同記者会見に臨む状況は想像に難くない。そこで、笑顔がどの程度ひきつっているか。これが筆者の注目点である。