豊島逸夫の手帖

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今こそ原点に戻る時

2023年1月27日

今日は説教をひとつ(笑)。

「国内金価格、過去最高値更新」との報道が流れ、銀行、証券、保険などの機関投資家たちから金価格動向について聞かれる。

3か月ごとの決算でリターン(儲け)という数字を出さなければならない人たち。従って来週のFOMCを視野に短期的金価格動向を知りたがる。今晩発表されるPCEインフレ率。更に来週早々に発表になる雇用コスト指数。パウエルFRB議長が重視する、このふたつの統計により「インフレ頭打ち」が確認されれば、FOMCでの利上げも今回の0.25%(予測値)と、あともう一回0.25%の利上げ(3月FOMC)で打ち止めとなろう。NY金はそこまで織り込み、先走り気味に1900ドル台を突破した。円相場も120円台まで円高ドル安が進行した。

そこで市場の眼は5%前後になる米政策金利をFRBが年内維持するか。或いは利上げ不況対策として早々と利下げに転じるのか。この一点に興味が集中している。市場側は政策金利が5%には達せず、頭打ちの後に年内利下げと読む。利上げが天敵の金市場ではNY金2000ドル突破のシナリオとなる。

対してFOMCでは5%超への利上げを強行して、更にその高水準を場合によっては来年まで維持するとの見解が強い。この場合はNY金が一転、反転するシナリオとなる。3月で利上げを一旦打ち止めにしても、その後の経過観察でインフレが再燃するケースも想定される。その場合は打ち止めされた利上げが年後半に再開されよう。NY金は2000ドル突破後大台は維持できず弱含みとなる。
どちらに転ぶかはFOMCでの議論、そして経済データの出方次第。
それゆえ来週のFOMCは極めて重要なのだ。後日公表されるFOMC議事要旨も注目されよう。

とまぁ、機関投資家たちには語っているが個人投資家にはFOMCに一喜一憂せず、じっくり積立方式で買い増してゆくことを強く勧めている。個人の強みは決算に縛られず、じっくり構えて長期保有を実行できること。筆者もディーラー時代には決算日までに結果を出す必要がない個人投資家が羨ましかった。個人でもプロに勝てるのだ。ところが個人投資家はこの「武器」の有難みを知らない人も多い。
ということで今日の説教はおしまい(笑)。

なお、過去最高値で店頭では現物金の売り戻しが目立つ。グラム1000円とか2000円とか、今となっては夢のような価格で買った人たちが実際には多いので、これは当然の流れだと思う。保有している金の一部を売って、リベンジ消費や旅行に充てることは自分へのご褒美とも言える。但しそれなりに税金も増えるので覚悟召されい。

更に、保有している金を売っても、それで次はどこに投資するというのか。株も債券も外為も視界不良だ。マクロの視点に立てば急いで売ることもなかろう。いずれ金の国際価格は3000ドルを目指す。結局売るべきか否かは当人のライフスタイルやライフステージにより事情が大きく異なるので一般論では語れないものだ。
また、自分の欲望との戦いとも言えるので、損切りより利益確定の売りの方が難しいと言われるのだよ。贅沢な悩みではある。

2023年